古代より、筆記具として親しまれてきた蝋板と尖筆。プトレマイオスは、ミエザの学舎でもらった蝋板と尖筆を、生涯大事にしつづけた。
けして豪奢なものではない。神秘がこもっているわけでもない。蝋板も尖筆も、実用本位のそっけない代物に過ぎない。
だからこそ、東征に参加したときも、賢王としてエジプトを治めたときも、この蝋板は彼にとっての心の支えでありつづけた。もう二度と帰ることのできぬ青い時代を、この蝋板はいつでも連れてきてくれたのだ。