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Artist's commentary
#NegaResurrectionPLR P010
シリーズ:novel/series/8632277
P0010 ミートアクアリウムの出現
夏、今日も私は旅をしている。
目的地の無いあて無き旅は今年で3年目になる。
離職する私を上司は口汚く罵倒したが正直あまりピンとはこなかった。
私の人生は空っぽ、というのは表現がチープな感じ。
すかすかしている、張り合いがない、面白くない、正しい人生はどことなく堅苦しくて、私好みじゃない。
かと言ってパリピで刺激バリバリ、夜もギラギラで原色サイケデリックな生き方は到底出来ず、私は今自転車に乗っている。
別に自分探しとかそういう高尚な意図はない。
比重で言えば逃避の方が多い。
自分の欲求を明言化できない。
突然に始まるファンタジーを求めているわけではないが、暑い日差しと平穏な日常も私の欲求を隙間なく埋めてくれてはいない。
その日はさびれた漁村に通りかかり、そこで宿を探すことにした。
勿論いつも宿が取れるわけではなく、野宿もあるし、運よく民家に泊めてもらえる場合もある。
お金は旅の内容をまとめたアフィリエイトブログのほか、旅先で撮影した写真を素材にしたものを海外向けに販売している。
和風の写真、田舎っぽい雰囲気はトラディショナルだって一部の人たちにはたいへん人気だった。
その他にも旅先で出会ったスクープを売り込むなどで日銭を得ているが合わせて二束三文、基本的に宿は贅沢品ではあった。
シャワーがあると嬉しい、夕食付きで港町なだけあり海産物がおいしかった。
ぼろ宿ではあったがトイレも綺麗だ、値段十分どころかおつりが来た。
おまけのように宿の主が街の方まで行くとの事で出発時に乗せていってもらえる事になった。
おつりがもっと来た。
翌日、都合により早い6時の日差し。
本来ならば朝日に瞼を焼かれているころだが今日は妙に霧が濃い、道中不安はあったが予定通り私たちは出発した。
案の定のぼろ車だったが問題無く自転車も詰めた。
「わりぇけど安全運転で行かせてくれ、こんな霧が深いと慣れた道でもおっかねわ」
「そんな霧が出る地域なんですか」
「んや、んなこたないよ、今日は異常だね、積み荷が悪くならんうちに着きたいわ」
「魚か何かです? 昨日の夕食、ホント美味しかったですよ」
「ん、まぁ、冷凍食品みたいなもんだ、知り合いの業者が入用でね市場の方までいかにゃいけんだよ」
なんて、他愛ない会話が続き、そしてそのうち車が止まった。
ちょっと油っぽいような、焦げ臭いような匂いがした。
主はすまないね、という顔をして車を出た。
免許こそ持ってはいるが車はからっきしだった、私は何もできないがマップではすぐ近くにカー用品店があった。
何もしないよりは良い、車に固定していた自転車を解いた。
「ちょっとー、行ってみますね」
「わりね、俺の方でもやってみるけど、わんないけどちょっとわかんないわ」
自転車で5分程度。
急いで手続きを済ませて場所を伝えて戻ってくる、往復で20分もかかっていないハズだった。
霧はより一層深くなり、ライトが無いと遠方は全く見えなくないほどになっていた。
車が見えた。
いや見えたと思った。
「ちょっと待って、ちょっと待って」
車の中から金切声が聞こえて、空気は揺れた。
脈打つ車がそのリズムに合わせて体液を噴き出している。
液体は空気中に噴霧され霧と混じり合い体に張り付いてぺとぺとして不快で気持ちが良かった。
日常の壊れる音に体が濡れた。