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Artist's commentary
#NegaResurrectionPLR P009
シリーズ:novel/series/8632277
P009 魚面カルト教団
魚面と呼ばれる者たち。
いわゆる広義でのカルト教団であり、魚人と呼ばれるポストヒューマンへの進化を目指すデミヒューマンのたまり場。
多くのはぐれ物、無法者、アウトロー、クズ、人でなし、ろくでなし、文無しが日々絶え間なく流れ込む地龍市場の土壌を利用し独自のコミュニティを築いた異常者集団である。
連中に需要のある冷凍人間とはどうやら儀式の供物の事らしく、食用ではないらしい。
年齢二十未満、交配の経験がない物が優先されるが厳密ではない。
そのほかの基準は無く、人種や出生、経歴、種族、インプラントの有無などは不問とされている。
彼らが管理する冷蔵倉庫に入るとそこには多数の人間が市場のマグロのように床に並んでいた。
安価に流通している商用人種、バラックで勝手に増えた人間にある日突然仕事が与えられ今そこに並んでいる。
彼らが崇めるのは巨大なタコの化物ではないらしく、それはポストウォーターと呼ばれる水。
それは、はたして本当に、餌など必要なのだろうか。
私が売り飛ばした冷凍人間の一体が大柄のマスクマンに無造作に引きずられ運ばれていった。
名前はたしかエミ、8人兄弟の長女で両親はいない。
残りの7人の兄弟たちは姉の売り上げで久々にまともな食事をとっている頃だろう。
一番長く生きた者が窮した際の食費に置き換えられる事は決して珍しいことではないのだけれど、それは残された兄弟にもいずれ順が回ってくるという事になる。
「これからポストウォーターに供物を提供しますが、ご覧になられますか?」
作業員のリーダーらしき男は部下に指示をしながら問いかける。
ポストウォーターというヤツはこの倉庫の地下プールに満ちているらしく、丸く切り開けられたコンクリートの奥にはゴミや羽虫が浮かぶ薄汚れた不衛生な汚水が広がっていた。
その丸い大口の中に冷凍エミは引きずられ、投げ落とされる。
どぷんと吸い込まれるように暗い水の中に消える。
地獄の入り口か、処刑場みたいだ。
私の商品だった8兄弟の長女はまるで意味もなく汚水の沈殿物になった。
用意された餌は淡々と事務的に給されていき、中にはご丁寧に食べやすくされている者もいた。
彼らは延々黙々とこんなことを続けているんだろうか。
法が衰え、自分でルールを作り始めた人々は輝いた瞳で人を屠殺していた。
「そもそもポストウォーターってなんなんです」
「僕も詳しくい事は知らないんです、前教祖が手に入れた選ばれた者たちだけが飲むことを許された特別な水らしいです」
「え、あ、これ飲んでるの?」
「ああ、もちろん今は浄水施設を通してですけどね、基本的にここの人たちはこの水しか使用しません、これもマーピープルになって深淵の時代を生き抜くための修行なんですよ」
彼は誇らしげだった。
「いろいろお世話になっているあなたにも是非その加護を、と言いたいところなんですが教団員しか飲めない秘匿物でしてすみません。実はポストウォーターには厄介な性質があって通常の水分子を連鎖的に置換する性質があるそうなんです、だから例え一滴でも外へ漏れるとこの教義が破られてしまうんですよね、そのためにここの貯水槽は三重構造になっていまして」
彼の話は続いたが私の耳には届いていなかった。
眉唾な話だが、一応その日から私はペットボトルの水しか飲まないようにしている。