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Artist's commentary
或る蛇を殺した槍
その槍に銘は無い。
使い手も定かではない。
ヴィスコンティ家の祖にあたる騎士であったとされるが、それが正しいかどうかもわからない。
当事者である彼女が覚えているのは、
全てが終わった後のその光景だけだ。
冷たさと静けさ。
住み処であった沼地に流れ出ていく、赤黒い体液。
そこに突き立てられたその槍は、
くすんだ灰色の墓標のようで。
そのまま色褪せて朽ちるしかない、
何の意味もない自分に似ているように思えて。
勿論のこと、あまり好きではなかった。
苦手だった。怖かった。
―――だから、せめて、自分で持っておけばいいのではと思ったのだ。
どこかの誰かかもしれない騎士が持っていた槍は、
そうして、どこかの誰かかもしれない蛇の手の中に。
でもある日、ふと思い立って磨いてみたら、
予想外に綺麗に、ぴかぴかと輝くようになった。
あのとき見えていたものだけが真実とは限らなくて。
ひょっとしたら、自分が絶望していた全ても、意外と
捨てたものじゃなかったのかもしれないなと―――
この槍と、かつての自分を見つめることが、
少しだけ苦手ではなくなった。