
Artist's commentary
黒き刃
その刃は、黒い。
月なき夜を鋼の硬度に凝縮したかの如き刃だった。
暗中で閃き、切り裂くための刃だった。
陽光の下で華やかに戦うためではなく、
ただひたすらに、獲物を殺すためだけの刃だった。
教団の秘技が施されたダマスク鋼の刃は、
数多の血を吸いながら、決して錆びることなく。
年経て尚も切れ味を鈍らせず。
―――死の夜をもたらす黒き刃。
最高の技を修めた者が振るわばあらゆる敵を排す。
“人を殺す方法は、幾らでもある。
方法に拘るのは二流どころか三流だ。
刃に何かを託した連中が作り上げたおとぎ話だ”
少年は言う。
手にした黒き刃の重さを感じながら。
“……でも、きっと。
込められた願いは本物だ”