
Artist's commentary
駆け落ち?
1番人気に支持されたチューリップ賞は内が空いたら内に突っ込むという僕のレースプランだったが、その結果、一瞬空いた内を狙ったところをフタをされてしまいスティルはその後進路を外に切り替えて猛追するも僅差の2着に敗れてしまった。
僕のレースプランのミスのせいでスティルが負けてしまった。そう考えるだけで帰りの足取りが重くなる。担当とはいえ一介の新人トレーナーのミスのせいで負けてしまったのだ。
「スティルは桜花賞を勝てるだろう。」
それは予感や期待ではなく確信に近いものだった。
「でも、その時僕はスティルの隣にいない。」
担当とはいえ一介の新人トレーナーのミスのせいで負けてしまったのだ。担当を降ろされたとしても文句は言えない。
“嫌だ、ずっとスティルの隣にいたい。"そんな思いからか自然と帰路につく足取りは重くなる。
「帰りたくない...このままスティルと...」そんな想いが口から零れ出てしまった。
すると..
「トレーナーさんと2人でどこか遠くへ逃げてしまうのも良いかもしれませんね。」
スティルは僕の思いを知ずかそう告げる。そんな彼女の微笑みを見てハッとする。何を弱気になっているんだ。そもそも、まだ担当を降ろされるって決まったわけじゃない。チーフトレーナーにお願いしてみよう、"もう一度チャンスを下さい。"と。
「いや、今日は帰ろうか。大丈夫、僕は何があろうと君の隣にいるからね。」
...
覚悟を決めてトレセン学園に戻ってからチーフトレーナーの元を訪れた。そこで意外な光景を目にする。
チーフトレーナーは笑って僕のことを出迎えてくれた。「本番に活かしてくれればそれでいいですよ。」そう告げて僕の肩をポンと叩いた。
"本番に活かしてくれれば"つまり次は無いということだ。ここから僕とスティルの負けられない桜花賞への戦いが始まった。