
Artist's commentary
バレンタイン大遅刻だけど完成
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夜が深くなるほど、甘やかな熱が募る。
私の指先には、温もりと甘さが絡みついていた。
ホイップクリームをかき混ぜるたびに、心が蕩ける。
ボウルの中、白くふわりと膨らむそれに、私はそっと小指を差し入れた。
すくい取る。
ゆっくりと、唇に運ぶ。
「……ん、ふ……」
舌を這わせる。
冷たく、なめらかで、甘い。
ふわりと舌に溶け、まるであなたの温もりに包まれたような気がする。
目を閉じれば、あなたの顔が浮かぶ。
こんなにも、あなたのことばかり考えてしまうなんて。
あなたがこれを口にしたら、どんな顔をするのだろう。
甘さに目を細める?
それとも……私の想いに、気づいてくれる?
「……ふふ。」
熱が、奥からじんわりとこみ上げる。
でも、まだ終わりじゃない。
最後に、想いを形にしなければ。
マジパンプレートを手に取る。
優しく、なめらかな感触。
この小さなプレートに、私のすべてを込める。
チョコペンの先をそっと握り、震える指で文字を書く。
――「愛してる」
それだけじゃ足りない。
もっと、あなたの胸に届く言葉を。
――「あなたがすべて」
そう。
私にとって、あなたはすべて。
どんな言葉を並べても、伝えきれないほど。
あなたがいなければ、私は満たされない。
あなたの声が、あなたの温もりが、私の心を満たしてくれる。
もっと、もっと愛してほしい。
もっと、もっと甘くしてほしい。
だから――
――「この気持ち、受け取って」
書き終えた文字を、じっと見つめる。
私の想いが、この小さなプレートに込められている。
あなたの唇が、これを口にする瞬間を想像するだけで、胸がきゅっと締めつけられる。
「……ふふ……。」
想いのすべてを詰め込んで、そっと箱に収める。
でも、まだ足りない。
マジパンプレートは、甘くて、すぐに口の中で溶けてしまう。
あなたがそれを味わう瞬間は、きっと一瞬。
私の気持ちも、一緒に溶けて消えてしまうのではないか……そんな不安が、胸をかすめた。
「……私の想いは、そんな一瞬で終わるものじゃないのに。」
あなたを好きな気持ちは、ずっと続いていく。
時間に溶けることなく、心の奥に残り続けるもの。
だから――
私は、便箋を取り出す。
チョコレートのように甘くて儚いものではなく。
口にしてなくなるものでもなく。
あなたが何度でも手に取って、読み返せるものを。
私の愛を、形として残せるものを。
「……あなたに、ずっと私の想いが寄り添うように。」
震える手でペンを握る。
これを読むたび、あなたが私の愛を感じられるように――
あなたがどんなに遠くにいても、心はそばにあると伝えられるように。
私は、ゆっくりと言葉を綴り始めた。
「……あなたに、届きますように。」
夜の静けさに、私の鼓動が響く。
小さな箱を手に、私はあなたの部屋の前に立っていた。
ノックする。
扉が開く。
目が合う。
その瞬間、全身が熱くなる。
喉の奥が甘く痺れるような感覚に包まれる。
「……これを、受け取ってください。」
箱を差し出す。
あなたが、それを受け取る。
指先が、触れる。
――ああ、もう、だめ。
たったそれだけで、心が蕩けてしまいそう。
「……あなたのために、作りました。」
声が震える。
胸の奥が、じんじんと熱い。
あなたが受け取ってくれる、それだけで……。
たまらなくなって、私はあなたの胸に飛び込んだ。
ぎゅっと、しがみつく。
あなたの温もりが、私を包み込む。
「……受け取ってくれて、ありがとう……。」
もっと感じたい。
もっと触れたい。
あなたに、もっと、もっと……。
指先が、そっとあなたの背中をなぞる。
唇が震える。
あなたの声が、体温が、心の奥まで染み込んでくる。
私は、そっと目を閉じた。