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Artist's commentary
ただ柔く穏やかに、そっと寄り添って前編(SS付き)
「うぅぅ〜、やっと課題終わったぁ〜!」
最後の単語を書き取り終えると、咲希は脱力して机に突っ伏した。教室の窓から侵入してくる陽射しはいつの間にか横向きで、その傾きようったら今の気分とどっこいどっこいだ。
「先生も厳しすぎるよ…そりゃ授業中に居眠りしてた私が悪いけどさぁ…」
ぶつくさと愚痴が口をついて出る。昨夜は曲作りの調子がいつになく良かったのだ。
夢中で音を追いかけていた所に唐突にサックスの低音が割り込んできて、それが新聞配達のバイクの音だと気付いた時には午前4時。作曲のお代は厳しさに定評のある英語教師の眼前での堂々たる居眠りで、プリントいっぱいの英単語の書き写しというお釣りまで付いてきた。
「みんな待ってるかな…早く提出してスタジオ行かなきゃ!」
沈んだテンションも、身体の気怠さも、全部吹き飛ばすように。
指を組んだ腕を、ぐう、と天に伸ばした。