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Artist's commentary
Farewell, Hero Girl
最初の恐怖を感じたのはいつだっただろうか。
幼かった私は、無力故の根底から湧き上がってくる際限の無い暗闇にその身を震わせながらも、己の信念を握りしめて拳をつくり、勇気を奥歯で擦り減らしながら立ち向かい続けた。
本当の強さに気付いたとき、私にはたくさんの大切なものが光っていた。
友と語らい、笑い、泣き、仲間と手を取り合う。私の根底から湧き上がるものは恐怖から勇気へと変わっていった。
大切なものはすべて守れると確信していた。
膨張しすぎた光とそれを補う力の外郭。その殻の隙間に見え隠れするのは、傲慢と強欲。両手で掬い上げきれない光が、指の隙間からすり抜けていく。
未熟。愚鈍。
無限に広がる空も有限であること知る。信念で固めた翼も光に近づきすぎると溶けてしまうことを知る。窓辺で寄り添うほどに近かった陽も今では雲の上の遥か彼方で明滅している。
これからの私は大切と大切を天秤にかけながら生きていくのだろうか。そう思うと地を踏みつける度足に激痛が走った。更に己の未熟さを痛感する。
日々綴った光はいつしか手のひらサイズでくしゃくしゃになって、ポケットの中で丸くなっていた。
"立ち止まるな ××××"
この孤独は孤独ではない。手に残った体温を握りしめて拳をつくり、思い出を奥歯で擦り減らしながら歩く。
明日、私はまた大海を知るだろう。