Artist's commentary
潜忠裏御頭「谷岡」動く
ビンビンビンビン……
血に汚れた伝書蜂が夜の町を飛び、とある黒塗りの探偵事務所、探し屋「潜忠裏 ーせんちゅうりー」へと辿り着く。
伝書蜂の持ち込んだ知らせを受け、潜忠裏の御頭「谷岡」は、右腕の「多田野」、三姉妹の「犬走 朱紅蓮 ーいぬばしり しゅくれんー」、「犬走 見知 ーいぬばしり みじ‐」、「犬走 狗 ーいぬばしり いぬー」を引き連れて飛び出した。
数刻の後、夜道に広がる凄惨な事件現場が発見された。3人の男の遺体、全員が男性器を切り取られており、そのうち1人は商連合蜂屋の「ゆうさく」だった。
「ゆうさくの奴…俺たちが動くまで待ってろって言ったのに先走りやがって…」
「谷岡さんこれ、万亜珠を殺ったのとは様子が違いますよ」
「あぁ、現場が綺麗すぎる。壊し屋じゃねぇな」
「そもそも壊し屋は悪人を狙うって話じゃないんですかぁ?殺しもしないって話でぇ」
「だからヤバいんだろうが、ゆうさくを殺せる程の人斬りがこの町に現れたんだぞ。それに遺体から見つからない男性器、これが目的だとすれば相手はおそらく話の通じる相手じゃねぇ」
谷岡の煙草がいつもより早く燃えていくのを見て、潜忠裏の面々に緊張が走った。
そんな中現場を調べていた多田野が何かを見つけた。
「…これは!」
「何か見つけたか」
「ぼく達昨日、壊し屋に関連する過去の現場を洗うように言われたじゃないですか。それでわかった事があるんです。」
「あー!流派の事デスネー!」
「そう、壊し屋が悪人と戦ったという現場に残された破壊の跡、あれは「御満光壊流」に見られるものです。でも万亜珠の時の現場だけはそれに混ざって違う刀傷がって、あれは「淫豪流」のものでした。そしてそれと同じものがゆうさくさんの身体にも…」
「かつてその使い手は戦場にて百連斬りと恐れられた…殺人剣淫豪流でしたっけ?残ってたんですねぇ」
「つまり、壊し屋は二つの流派を使える…。可能性も二つです、別の人斬りが存在するか、壊し屋が相手によって剣を使い分け現場を偽装しているか」
「探すぞ、壊し屋って奴をな。直接聞くに越したこたァねぇ。商連合の探し屋、潜忠裏の名にかけてな」