Artist's commentary
盗賊「万亜珠」に会う
「待てコラ!!」
女の正面へと回り込んだるりまは鯉口を切って問い詰める。
「その顔…お前が噂の盗賊「万亜珠ーまあずー」か。狙う相手を間違えたわね、私の大切な本を返して貰うわ」
「これか?ってことは値打ちの出るモンだな?じゃあ返せないな!」
「逃げられると思って?」
「お前と戦っても得が無いしな、逃がして貰うぜ」
「そう?私を殺せば「壊し屋」を始末したって、悪人の名に箔が付くわよ」
「いらね〜。なんだよその無茶苦茶な提案は。あぁでも一つ気になるんだが、この本ってのは全部でいくつあるんだ?」
「何て言った?」
「これが何冊あるかって聞いたんだよ。私の持っているのはこれで二冊…他にも持ってる奴がいるんじゃないのか?」
「一冊目を何処で?」
「最近殺した女が持ってたよ。事の経緯は今のお前と同じだ」
「貴様……!」
復讐の相手を奪われた怒り。それと同時に、淫豪流継承者を殺しているこの盗賊は只者でないという緊張感が、るりまの心を静かに燃やしていた。
「叩き潰してやる…」
「おもしれぇ、かかってこ」
言い終わるより早く、抜き放たれたるりまの殺人奇剣「更打「颪」ーさらだ おろしー」が万亜珠に迫る。しかし万亜珠は笑いを浮かべたまま手にしていた巨大な箒の持ち手を使い刀を弾き返す。
「金属音…!?」
「顔がバレてるんじゃ生かす方が得が無い、「壊し屋」を始末して逃がしてもらうとするかな。その刀も金になりそうだ。あぁでも、本について話してくれれば半殺しくらいで終わらせてやるかもしれないぜ?」
箒を棒術の如く操り、横凪に叩きつける。
刀で受けるが、想像の何倍も重たい衝撃に押し返される。そして箒の穂がしなって防御の外側からるりまを襲い、切り傷を付ける。
その箒は全体が金属で作られており、穂の部分は細く鋭く、そして棘を持った、無数の有刺鉄線のような刃が集まって形成されていた。
「斬られた!?しかも刺さる…ッ!これは箒に見せかけた武器!?」
「私の「鉄の茨」の感想はどうだ?さぁ血の海が待ってるぜ、「壊し屋」さん」