Artist's commentary
栞奈の生徒「似森」に会う
「それじゃあアンタも手伝いなさいよ」
「ハイ…」
善戦はしたものの、結果を見れば敗北そのもの。るりまは自分が戦いで散らかしてしまった、栞奈の道場前の片付けを手伝う事になった。
「刀を抜いていれば勝負は分からなかったわよ」
「殺す気だって敵いませんでしたよ」
「謙遜しちゃって〜!アンタ剣の腕は言うだけあって凄いと思うわ。でも徒手格闘を相手にするのは慣れてないみたいね」
「痛感しました、指南の上では学びましたが、実戦の殆どは剣を相手でしたから」
「ならここでやってみない?アイツにとってもいい稽古になるわ。おーい!似森君!」
声をかけられて生徒の中から1人が進み出る。
「栞奈さん。どうしました?」
「アンタ、るりまと手合わせして貰いなさい。彼女も武闘家との戦い方を学びたいって」
「似森さんでしたっけ?お願いできますか?」
「構いませんよ。自分は「元須磨 似森ーもとすま にもりー」です、よろしくお願いします。」
るりまは木刀を手に馴染ませながら、似森は両足の準備運動をしつつ道場の中心で向かい合う。
「用意はできてるわけ?それじゃあ初め!」
合図と同時に視界から似森が消える。しゃがんだ事に気が付き、目線を下げた次の瞬間には似森の体は再び視界の外へ。バネのように勢いをつけ、柔軟な足腰から繰り出される上段蹴りがるりまの側頭部へと襲いかかる。
るりまの視界では似森の足元しか捉えられなかったものの、片足を持ち上げる動作を見て“上を取られた”ことを直感的に理解し、それならば“更に下へ逃げる”為に体を仰け反らせた。
風を斬る音と共にすれすれを似森の脚が飛んでいく。そのまま転がって距離を取ったるりまを見て、似森は刀を納めるように蹴り上げた脚をゆっくりと戻した。
「あ、危なかった…!」
「この初撃を躱せる人は、ここじゃ栞奈さんくらいです。全力で戦えそうで嬉しいですよ」
「流石ね〜、似森の「撓脚ーとうきゃくー」を初見で避けてみせるなんて。アイツは足技だけなら私がこの道場で唯一互角と認められる生徒なのに、面白くなりそうね」
「次は避けられますかね?」
「一撃必殺の脚、刀を向けられているのと同じと思えば…頭の中で、相手の攻撃に剣を重ねて、見切る!」