Artist's commentary
武闘家「栞奈」に会う
「いらっしゃいませ〜って、るりまじゃないか」
「にょんさん、こんにちは」
団子屋「福鼠」の暖簾を潜ると声をかけてくれるのは、店の主人「にょん」。気さくな主人で団子も美味いと、周囲からは「鼠屋」と呼ばれ親しまれている。
「 今日の甘蜜団子は売り切れだよ。普通の団子なら、まだまだ残っているがね」
「そうですか…じゃあ普通の1つ貰えますか?」
「はいよ。また朝から喧嘩かい?この町は広いから、手当り次第聞いていけばあんたの言ってる「探し人」が見つかるかもしれないけどね。毎日毎日、危険な喧嘩ばかり引き受けてちゃあんたの身が持たないよ」
「ご心配どうも。でもこれは自分の為だけじゃないんです。あいつらは殺人剣の継承者…野放しにするには危険すぎます」
「まぁ、わたしは団子を買ってくれるなら何でもいいがね。でも自分が探し人になってちゃ世話ないよ、あちこちで碌でもないのに手を出すせいでちょっとしたお尋ね者だよ」
「え!そうなんですか!?」
「知らなかったのかい?悪党を成敗しては辺りを壊して消える「壊し屋」なんて呼ばれてるらしいよ、わたしもさっき…」
「アンタが壊し屋ね?話は聞かせてもらったわ!」
にょんの言葉を遮るように店へ入ってきた女が声を上げた。
「えっと?そうみたいです…?」
「…さっき彼女から聞かれてね。壊し屋がここに出入りしてるって聞いて探していたんだとさ。誤魔化しといたのに、運が悪いね」
「 昨日私が居ない間に、道場の前を壊し回って、きっったなくしたのはアンタね?あんなに散らかして帰って、タダで済むと思ってるわけ!?」
「う!アレは盗人が逃げ回るからあんな所で戦う羽目になって…」
「…まあ実はそんな事どうでもいいのよ。あの木々や道の壊れっぷり、普通に刀で戦ってもああはならないわ。面白そうだと思ってね、アンタ強いんでしょ?」
「…強いですよ私は」
「随分な自信ね、ナカナカヤルジャナイ。最近この辺の剣士じゃ相手にならなくて退屈してたのよ。相手になってもらえるかしら?」
「いいですよ。私も聞きたいことがありますし。私るりまと言います、お名前は?」
「栞奈よ」
「ちょっとちょっと!店で暴れないでおくれよ!さっさと出た出た!」