Artist's commentary
ウマ娘の平熱はヒトより少し高い
ウマ娘の平熱は個人差はあるが37.6℃前後らしい。
これはヒトよりおよそ1℃程高い体温だ。
その影響もあってか冬場になると暖を取らせるという名目で手を繋いだりスキンシップを図るウマ娘も少なくないという。
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今日は担当ウマ娘のスティルインラブと2人で大井レース場のイルミネーションの下見に来ていた。
近々大井レース場で開催されるトークショーへの出演オファーが来ていたからだ。
つい先日まで暖かかったので油断してしまった。
今日になっていきなり冬本番の冷え込みになってしまった。
一応コートは着ているが冬本番の用意はしておらず手袋やマフラーもなく、首元と手首が冷たくなってしまい身体中が冷えてしまう。
「トレーナーさん、もしかして寒いですか?」
「いや、そんなことはないぞ?」
「でも、トレーナーさん両手をポケットに入れて...」
どうやらスティルには全てお見通しなようだ。
「急にこんな寒くなるなんて思わなくてな」
「トレーナーさん、少し手を出してみてください」
「そうだよな、両手をポケットに入れてたら危ないもんな」
そう言って手を冷たい風が刺さるポケットの外に出すと...
左手が温もりに包まれた。
スティルが僕の左手を両手で握りしめていた。
「スティル...!?」
僕がたじろぐのも気に留めずに両手で握った僕の手をスティルは自身の頬に当てる。スティルの熱が直に伝わってくる。
「トレーナーさんは知っているかと思いますが、ウマ娘の体温はヒトのそれより少し高いんです。」
「それはもちろん知ってるけれど...これじゃスティルが寒いだろ?」
「いいえ、トレーナーさんを直に感じられるのです。これほどの熱は他に無いでしょう?」
「スティルがいいならそれで...いやいや、こんなとこ誰かに見られでもしたら...」
「今日は本格オープン前で関係者しかいません。それに、今さら噂になって困るほど私とトレーナーさんの関係性は軽薄なものでもないでしょう?」
スティルの言い分も最もだし僕としてもこの瞬間が続いて欲しいとすら思っている。
「そうだな。スティルの言う通りだよ。」