バックミラーには、まるでこちらを静かに伺うトラのように、赤と黒のツートンカラーの車が居た。低音のアイドリングを響かせ、唸っているようである。信号が変わると、猛々しい雄叫びを響かせ、ゆっくりとこちらを追い抜いていく。こちらは食われるのを免れた草食動物のように、去っていく猛獣を恐ろしげに見続けていた。