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Artist's commentary
雲煙の聖女:ハドラ
彼女は海獣であり、海獣族がなぜこんなにも虐げられ、利用され、搾取され、
地位を得る事が許されなかったのかと、怒りを抱えて生き延びてきた。
あるとき彼女は自らの肉体が雲や煙のように融解し、拡散することを知った。
そして高圧と高温にも耐える肉体を持っていることを知った。
腕は溶け、煙となった。髪はほどけ、雲となった。
尾はねじれ、煙幕となって拡散した。
その雲の力をもって、海獣族の生きる隠れ家を繕い、自らがその長となろうとした。
しかしそれは誤解され、彼女は人間たち、妖精たちの棲む街の脅威となっていた。
彼女はヨドミハザマの海草獣によって捕らえられ、海獣や人魚について知識の深い、
ラクリム・ケントルムの信者に引き渡され、ラクリム・ケントルムの教えを押し付けられた。
ラクリム・ケントルムを庇護する隠れ家の雲となること、それしか生き延びる道はなくなっていた。
今やハドラは誇り高きラクリム・ケントルムの教会を守る雲煙となった。
その腕や指、髪は拡散し、聖域に入り込もうとするものを拒否する。
その耳から下げた香炉には、日輪だけが嗅ぎ分けることのできる香が漂い、
それはハドラの零れ落ちた軟骨から作られる。
日輪は、雲に守られ、そして雲はその中に渦巻く北風と雨粒を、守っている。
北風と雨粒は、結界の維持に不可欠であり、雲はそれが崩壊することを阻止するための鎧なのだ。