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Artist's commentary
決めポーズ
桜が散り始めている。
古来から、散り際の美徳を謳うものが多い。
『ねがはくは花のもとにて春死なむ』と詠んだのは
誰だったか。
境内の掃き掃除を終え、縁側でお茶を飲んでいた霊夢は、
小腹が空いたことに気づいた。
お茶請けのかき餅は食べてしまったし、もらい物の羊羹も
魔理沙に食べられてしまった。
このまま昼食時まで我慢するのも手だが、けだるい状態では
昼食の用意も面倒くさい。
「――霊夢」
何もない中空に、八雲紫の頭が浮かんでいる。
スキマは便利だと思うが、迷惑この上ない。
「何か用?」
「いま、おにぎり作ろうと思ってなかった?」
「よく分かったわね」
そう答えると、にわかに紫が色めき立つのが分かった。
「……欲しいって言ってもあげないわよ」
「今晩はうち、すき焼きなのよね」
「何個食べる?」
肉。肉は久しく食べてない。別に食べなくても死にはしないが、
おいしいものには目がない霊夢である。
「じゃあ、腋おにぎりを2つ」
「はいはい、腋おに――なんだって?」
「だから、腋おにぎりを2個」
「絶対いや! ちょっと汗かいちゃったもん」
「それなら、なおさら引き下がるわけにはいかないわね」
殺気にも似た、威圧感が押し寄せてくる。
なぜ普通のおにぎりではダメなのか。
なぜ腋おきにぎりなのか。
きっと、問いかけても答えは返ってこないのだろう。
霊夢は左腕を上げ、スペルカードを使うように、
その腋を見せた。
「――高くつくわよ」
霊夢の脳裏で、桜の散る様子がリフレインされた。
なるほど、散り際の美徳とは諦めの心だったか――
■腋おにぎり職人の朝は早いのです。ちょいとした記念絵。