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Artist's commentary
#NegaResurrectionPLR P013
シリーズ:novel/series/8632277
聖女イコに選ばれた男性
聖女イコというライバーがいるの知ってるだろ、先日ニュースでも取り上げられていた。
白いワンピースの女の子で名前は「ひじりめ」と読むらしくて初見で「せいじょ」と読んで俺は少し恥ずかしい感じになった。
その女は自身を教祖系Vtuberと名乗っていて、その視聴者たちは信徒と呼ばれていた。
実際大衆受けはしない個人勢だったにせよローカルな範囲で一定の人気はあった、喋りが上手いわけじゃないんだが人を取り込む力に長けていたというか、何となく魅かれる人物ではあった。
正直のところ教祖要素はただのお遊びのロールプレイで最初は他の配信者みたいにゲーム実況をやったり、ちょっとした企画事をしていたんだけど、次第に様子が変わって来た。
だんだん宗教染みた側面が見られるようになってきてその活動が真に迫るものになった。
なんというか活動が救いの概念を帯び始めたんだ。
中身の人間が変わったというウワサもあったけど声色、抑揚などはかつての動画とそう変わった様子はない、個人的には以前と同じ人物のような気がしている。
教祖とは言えそれは偶像であり、アイドル的であると言えばそうなる。
強いて違いを言うのであれば彼女は自身を救済の仕組みであると説いている点だろうが、その仕組みとは何か?
そして献身的に信仰を続ける事によって信者は聖女イコに選ばれ更なる大いなる救いの本質へと至るともしている。
カルト的な人気があった、まさにその通りだとは思う。
カルトだった。
カラーコーン族ってのがいるんだけど、まぁいわゆる過激派というかKKK気取りなんだろうか、カルト気取りでリアルイベントを開くそういった派閥があるんだ。
実際ヤバい事もやってるらしいんだけど表立った話にはならない、聖女イコに否定的な人物や組織への排斥活動や加害活動を行っているとも聞く。
俺も被ってみたことがあるがアレは実際見た目より重量があるし動きにくい、あんなの被って大騒ぎなんて正気の奴がすることじゃないとは思う。
ただイコ本人はこれを止める事をしていなかった、良い事だと思っているのか興味が無いのかは知らないが自身にもリスクがありそうな集団を放置しているように見えた。
他にもスパチャ献金というのもある。
高額なスーパーチャットをイコに飛ばすことで大いなる救いに至るという思想だ。
これも彼女は止めなかった、まぁ収入源を自ら断つようなことはしないかもしれないが、イコ周辺には少なからず反社会的な側面をもつ活動が付き纏い、そして彼女はそれを容認していた。
一方で彼女の収益活動等が凍結されるようなことも無かった。
実のところを言えば俺も彼女に対して相当な献身を捧げている。
生活費を除いた給料大半を定期的に献金し、彼女が欠かさず行う日曜配信には必ず参加していた。
確かに、救いは欲しかった。
俺が言う救いとは世界がガラッと変わるような変化、パラダイムの転換、何も始まらないままに袋小路にある自分の人生への福音、この汚泥からすくい上げてくれるようなそういった救済。
半分は本気だったが、半分は自棄だった。
別に彼女が好きなわけでも信仰を信じていたわけでもない、普通のライバーだったころから少し知っていたその程度の事だった。
それが趣味も人間関係も乏しい自分にとってのせめてもの世界への抵抗だった。
半分以上俺の世界は死んでいた。
そんな俺の所へある日、一通のメールが来ていたんだ。
送り主を見て、興奮を隠すのは難しい、聖女イコ支援協会を名乗るメールが俺のメールボックスへ来ていた。
一度落ち着くべきだった、単純な事務的なそういう連絡かもしれないし、もしかしたらそうでないこともあるかもしれない。
しかし件名の「貴方は選ばれました」という一文が何かしらの報酬、そしてそれは救いであることを期待してしまっている自分が居た。
ほぼほぼ間違いなく俺は選ばれた。
ゆっくりメールを開く。
なるべなくそっけなく、こっそりと、この沸き立ちを世界に気取られないように。
そこにはまず、こう書かれていた。
「おめでとうございます。貴方は■■■■■■人目の聖女イコへ選ばれました」
そして俺は救いの本質に触れたのだ。