Artist's commentary
#NegaResurrectionPLR P012
シリーズ:novel/series/8632277
ロケーション8と魔女の秘密
あれはまだ俺がガキの時分の話だ。
あそこは都心部からも離れた田舎町で多数の老人と、あとは人生をドロップアウトした連中のキャンピングカーが多い土地だった。
お世辞にも発展しているという感じじゃなかったが、スーパーマーケットもあってそれなりに活気はあった。
あとはロケーション8。
ロケーション8と呼ばれた馬鹿でかい施設が町の土地の数割を占めていた。
それは巨大な四角形の建物で近隣住民からは洗濯物が乾かないととても不評だった。
だからコインランドリーがすごく儲かったんだ。
そもそもロケーション8とはなんの建物なのか、まずそれがよく解らなかった。
外から見て解るのは非常階段ぐらいで何の建物かなんて皆目見当もつかない。
聞く話ではEコマース大手の物流倉庫だとか、製薬会社の研究施設だとかそういう話だったがそのどれもが噂話の域を出ない話であり、ロケーション8での求人などは見たことが無かった。
そしていつしか子供心に思うわけだ、あそこはエリア51のような国の秘密施設なんじゃないか、と。
実際ロケーション8には噂が後を絶たない。
周辺の土地から子供が攫われているとか、地下に巨大な空洞施設があるとか、UFOの発着場があるとか、そういった噂だ。
かつてはロケーション8がスクープをもたらすのではと一時期テレビ局のスタッフが張り付いていた時期もあったが、そういえばいつの間にか見なくなってしまった。
人々はロケーション8に飽きはじめ、それでも俺の中ではロケーション8はなんらかの輝きを維持していた。
ある日のことだった、近所に住んでいたメイナード爺さんが俺を呼び止めた。
メイナード爺さんは人付き合いも少ない変わり者だったが、俺は決して嫌いではなかった。
「なぁモリス、お前はロケーション8が好きかい?」
「いやそこまででも……いや、気になると言えば気になるけど」
大嘘である、俺は噂のロケーション8のことが大好きで、気になって仕方が無かった。
先週もくだらないオカルト情報誌をロケーション8が表紙にあったからという理由で買ってしまった。
当然中身は俺の方が詳しかった。
爺さんもそれを見抜いていたのか俺の返事など気にするでもなく話を進めた。
「オレは昔ロケーション8で働いていたんだ、だからあの中を知っている、本当は色々な規則とか主義義務みたいなもので話しちゃいけないんだが老い先短い人生を憂いてお前に教えようと思う、お前を選んだのは目がキラキラしていたからと、たまたま教えようかなという気分になっていた俺の目の前を今歩いていたからだ、ただこれを聞いたからにはもう後戻りはできない、お前は選ばないといけなくなる」
長々ともったい付ける爺さん、俺の目はそんなに輝いていたのだろうか?
俺はロケーション8を知りたかった。
ワクワクしていたんだ。
だから「早く教えてくれよ」と、そう答えたんだ。
「じゃあ教えてやる、あそこはなぁ作ってるんだ、魔女をよ」
予想外の言葉か返って来た、さて魔女とは作るものなのか。
「魔女? そりゃねぇよメイ爺さん、そもそも魔女ってのは工場で作るもんじゃない悪魔の股下で出来るもんだ」
「いいやモリス、いいか、魔女は工場で作るもんだ、俺は魔女の右腕を作る職人だったから知っている、そして魔女の右手は未来に繋がっているんだ」
メイ爺は呼吸を整えて続けた。
「3日後にロケーション8で事故が起きる、それは突然のことだが必然の事で避けられない、ロケーション8は激しく炎上しそして作られた魔女たちがロケーション8から逃げ出しこのポイントヴィクトリーへなだれ込んでくる、魔女たちが何をするかはお前が想像力で考えろ、お前は町から逃げる事も出来るしここに残る事も出来る、これは選択肢だ、好きな方を選べ」
その夜、爺さんは死んだ。
それを聞いたのは2日後だった。
ママが近所の婆さんから聞いたそうでどうやら強盗が押し入り、その騒動の最中爺さんはぶち殺された。
部屋は荒らされていたが、金品は盗られていなかったそうだ。
そして俺の心は決まった。