Artist's commentary
#NegaResurrectionPLR P006
P006 モニカの物語
シリーズ:novel/series/8632277
仕事の依頼が来た。
メールはニューロランナーを通じ頭の中に入ってくる。
後頭部に空いた小さな穴から液状のメールが流れ込んできた。
一件目の依頼はミミズジュースの仕入れ。
それは一種の電脳ドラッグ。
体中をワームが這いずり回る、あるいは体を出入りしたり食い破ってくるような感覚を得られるらしい。
それのどこが良いのか、勿論私は使ったことは無い。
薬物中毒者の脳から送られてきたメールは多重のスキャン後であっても頭に入れる事を躊躇させる。
セキュリティ上もそうなんだけど、なんか生理的にキツいものがある。
二件目は、新鮮な冷凍人間の工面。
これは魚面たちからの依頼。
彼らは定期的にこれを欲しがる。
はたして何に使うのか、三枚におろして食べているのだろうか。
ここ数年、人間の価値は下がる一方でこれ自体はすぐに用立てる事が出来るだろう。
最後のひとつ、これは初耳だった。
どうやら依頼主は黒本、いわゆる魔導書を探している。
そう言った類の物は原本も電子コピー品も扱った事はあるけれど依頼の品は聞いたことが無い。
とは言えこういった奇物はその多くが一点モノだったりするから初耳ということも少なくは無いのだけれど。
少なくとも出回っている黒本データブックには同名の書物は無く、そもそも本当に存在するものなのか薬中が見ている幻想の産物なのか現状では判断のしようが無かった。
そういえば以前とある男からこんな話を聞いた。
世界には無数の魔導書があって、現在人々が認知出来ているのはそのほんの一部でしかないのだという。
森羅万象、あらゆるモノにはそれにまつわる魔導書がある。例えばそこの路上で飲んだくれているオッサンの魔導書もあるし、そこで小便をひっかけている野良犬の魔導書もある。
そこで、私は聞いてみたんだ。
じゃあ、私の魔導書もあるのか、って。
すると男はにぃと笑ってこんなことを言うのだ。
なぁに、そこにいるじゃないか、と。
私の本には何が書かれているのだろう、まぁ所詮私の一生が記されている程度の物だとは思うけれど、少し気になった。
未来の私が見つける品物もその本に書かれているのかもしれない。
「ねぇ、あんたはネガリザレクション文書って聞いたことある?」
本なら魔導書にも詳しくはなかろうか。
勿論何も答えは返ってこなかった。