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Artist's commentary
#NegaResurrectionPLR P001
シリーズ:novel/series/8632277
P001 基礎から始める終わりの始まり
2045年8月11日、あの日の正午、ネガリザレクションの訪れ。
夏、空は青く、雲は高く遠い。
世界の大半が吹き飛び、人々が生きたままに燃え落ちた終末イベント。
それが私の知るネガリザレクション、世界の終わりの形のひとつ。
その日の私は近所の書店へ本を買いに行く予定だった。
世界の終わりに前触れは無く、終焉の悪魔は人々には見えない。
ひまわりは干乾び、ミミズは焼き焦げる。
鉄柱は折れ、自転車は拉げ、空は煤けていた。
形容し得ない非日常、途方もない破壊。
視野いっぱいに広がる終わりの光景が唐突に飛び込んで来た。
道の片隅には人の燃えがらが詰み重なり。
一部は燃え残り、一部は未だにジュウジュウと焦げ、時折炎を噴き上げる。
油とゴムとプラスチックとが燃える匂いと、黒い音と光と煙とがまぜこぜになって辺りに充満していた。
辺りの建物は根元から全て吹き飛んでおり、見知った光景は見知らぬ地獄に塗り替えられ私の眼前に並べられている。
以前見た100年前の戦争空襲がちらりと映り込み、目の前の光景はそれを上回るリアルとして焼き付いていく。
そんな終わりの中を一冊の本がゆさゆさと歩いて来た。
本、と形容するにはあまりにも歪に見えるそれは、それでも私には本に見えた。
くしゃくしゃに草臥れたページを纏うようなそれは終わりの風景に困惑し彷徨っているようにも見えた。
「あなたの名前は何ですか」
そうだ、本来の目的を思い出した。
私は本を買いに来たのだった。
「基礎から始める終わりの始まり」
名乗る本との視線が合った。