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Artist's commentary
じゅるり。
狩りの帰り、妖怪と目が合ってしまった。
妖怪は薄明かりを拾って赤黒くてらついた細い指を、一つだけ持ち上げて未だ残る錆の味をねぶっていた。薄い唇は言葉を紡がない代わりに、ちゅ、じゅ、と赤子が乳を吸うような水音を上げている。
背後に転がる食事の跡を見るに、腹を空かせているわけではないらしい。
実際妖怪のそれは、獲物を睨め付ける捕食者の目ではなく、赤ん坊が何となく目の前のものを凝視しているかのような、無垢で意味のないものだった。
そうと察していても恐怖で身動きの取れない私から目を離さないまま。ちゅぽん、と粘液が弾ける音と共に妖怪は口から指を離した。
「たまにはね」
「食べ物に、いただきます以外の声をかけても面白いかなーって。情が湧いた肉もけっこう美味しそうじゃない?」
弾むような高い声。悪戯心を含ませた言葉。つい先ほど人を食った舌であどけない少女の声を発する妖怪は、酷くいびつに見えた。そんな私の心を知ってか知らずか、妖怪は私に向かって一歩踏みだす。
「でも、また今度。お腹いっぱいなのよー」
ならばなぜ近寄ってくるのか。
昏い輝きをたたえた赤い瞳に釘付けになったまま、妖怪が歩を進める度に私は後ずさる。妖怪は恐怖する私をからかうようにくすくすと笑った。
「ばいばい」
そう短く告げた妖怪はひらりと身を翻し、次の瞬間には闇の中に消えていた。
後に残されたのは凄惨な現場と、安堵で腰を抜かした私だった。
数週間が経った。ある晩から賊が忽然と消えたと里では噂になっていた。
しかし、あの妖怪を見たという者は居らず、あれから私も会っていない。
この辺りに用はないということか。
もしくは、望む肉を平らげたのだろうか。
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案の定ルーミアの日遅刻。目指せ7日投稿…