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Artist's commentary
File01:彼女の寝室について
2年越しになってしまいましたが、以前出した同人誌のおまけを作りました。
同人誌は来週投稿します。こちらから先に見て問題はありませんが、細かい部分にあちらを踏まえた上での描写がある……ように見えるといいな!
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フレイムヘイズの回復力は絶大である。
大きな欠損を除けば、彼ら自身が望みでもしない限り、その身に傷跡が残ることはない。その回復力は契約時に、過去と未来の可能性をくべたことによる、変化への拒絶とでも言うべきものかもしれない。
したがって、もしフレイムヘイズを辱め、その肉体を意のままに淫らに変えてしまおうとするのなら、その回復を上回るほど熾烈で継続的な『開発』が必要となる。
彼女の部屋にはそのための機能が備わっていた。
夜明け時。
勤めを終えた少女が自室に戻れば、部屋の中央に鎮座するそれは主の帰還を迎えるように上蓋をもたげた。
たちまち立ち込める蒸気の向こうに、彼女の今日の『ベッドシーツ』がある。
『ベッド』。そう呼称したのは彼女の“旦那様”だが、この表現に共通項を見い出せるものはいないはずだ。
なぜなら、純白のシーツに代わってその表面を覆うのは赤黒く脈打つさまざまな触手だ。
高窓から薄っすらと差し込み始めた陽光を受け、シルク生地の代わりに輝いているのは、身をくねらせる触手たちから滴り糸を引く粘液。
そして、天蓋を支える柱のように上下に一本ずつ屹立したそれらは、今宵少女の前後の隘道を征服し、作り変えてしまうための肉削棒に他ならない。
この"燐子"は本来折檻用に拵えられた――そして彼女が娼館に勤めるにあたって調教に用いられた道具の一つでもある――中に入ったものを戒め、常人であれば数時間も待たず発狂してしまうほどの快楽で『苛む』拷問器具だ。
勤めのない時間をこの中で過ごすことが、幾度も反抗を図り『お客様』へ粗相を働く少女に課された罰だった。
考えなしに利用すれば娼婦を『ガバガバ』にして台無しにしてしまうこの調教具も、フレイムヘイズの回復力であればなんの遠慮もなく使用することができる。
どころかその過剰な愛撫は、少女の貧相な身体に『色』を添える結果になった。
均整を取り戻そうとする途上の少女の肢体に、かつての一級品の彫像のような引き締まった身体の面影はない。客を喜ばせるための柔肉が局所的に蓄えられ、代わりに僅かな脂肪も絞り取られ不健康に痩せた部位とインモラルなコントラストを描く。
無論、少女もされるがままだったわけではない。
これまで度重なる懲罰に晒されながら脱出への気概は些かにも衰えなかった少女である。
むしろ従おうが従うまいが罰を受けるのであれば、その反抗はいっそう激しいものになる。
――そのはずだった。
……彼女は生唾を飲んだ。既に幾夜とその中で過ごしたとは言え、その威容は何度見ても身をすくませる。
時折『ベッド』は待ちきれぬように彼女の身体に触腕を伸ばし捕らえてしまうが――今日は自分で挿れろとのことらしい。
ベッドの傍まで進んだ彼女は背を向け、後ろの窄まりを広げながら(先走った触手たちが長い髪に身を這わせ、しゃぶり上げた)躊躇いがちに肉棒に向けて腰を下ろす。剛直のもっとも太い部分は少女の手首ほどもあるが、昨夜の相手がそちらへの責めを好んだこともあり、彼女の陰腔はそれを柔らかく受け入れ、その薄い身のうちにしっかりと沈め切った。
荒らいだ息を整える彼女を、上蓋の怒張が急かすようにつつく。
身体を横たえ腕を固定ヶ所に差し込めば、胸に覆いが降ってくる。それらは乳房とも言えぬわずかな薄い胸を吸い上げ、勤め時に背徳的な陰影を形作る助けとなる。
同時に顔の横に現れたマスクのようなそれは、中央の弁で頬や唇を舐っていたが、やがて深い接吻をするように舌を絡め取り、口元を塞いだ。
脚を広げて拘束部に挿入すれば、いよいよ上蓋が降り、膣に肉芯を埋め始める。――と、その影に紛れるように伸びてきた疣目のある触手が、意表をついてクリトリスを挟み込んだ。
堪らず腰が跳ね上がる――はずが、僅かに触手の戒めを軋ませたのみ。
身体に降り注ぐ粘液と肉のカーテンの奥に見える赤黒い楔が、少しずつその全長を縮めていく。
差し込む光はやがて一本の筋となり、ひと息の後に、完全な暗闇へと変わった。
少女の身体を押し包んだ触手たちは、待ち焦がれたように全身を這いずり回り、すみずみまで媚毒粘液を塗り込む。肉孔を埋めるこわばりの動きは緩慢であるものの、過敏になった矮躯は既に激しい快楽を生み出していた。
せめて“燐子”が悦ぶ反応を返すまいという少女の細やかな抵抗――細やかすぎる『抵抗』は、早々に瓦解するように思われた。
少女の喘ぎ声を絡め取っていた肉マスクから吐き出される呼気に、媚精液の臭気とは違う甘い香りが混ざった。
途端、快苦に強張っていた身体からゆっくりと力が抜け、触手から与えられる刺激にされるがまま跳ね始める。
さきほどまでと打って変わって素直で率直なその反応は、まるで少女の心が抜け落ちてしまったかのように――『眠って』いるかのように見える。
……そのままでは心が砕けるまで抵抗し続けるであろう少女に対して、館の悪辣なる住人たちは一つ趣向を凝らした。
少女が十分にこの肉獄を味わい、僅かな足掻きすら恥辱のエッセンスにする客や調教師の手管に疲弊を隠せなくなってきた折、"燐子"には一つの機能が追加された。
吸い込みさえすれば異能者をも眠らせる毒――昏倒ガスの宝具は、どれほどの激悦が肉体を苛もうと、定められた刻限まで確実に意識を奪う。
『お客様』によく仕えるほど、反抗の兆しが少ないほど迅速に、少女にはこの睡眠香が与えられた。
聡い少女はその選択肢が与えられる企図を察し、なお抵抗を続けていたようだったが――最終的には『眠り』を選んだ。
――この娼館にただ眠らせるだけの道具? 無論、この館の欲望が生み出す宝具がその程度のものですむ筈がない。
睡眠香にもたらされる仮初の眠りにより、無防備になった身体はその間仕込まれる《振る舞い》を善く吸収した。この毒は覚えの悪い娼婦をも芸達者に変え得る睡眠学習の道具なのだ。
彼女にとって不要な眠りをもたらす機能を持ったそれは、確かに『ベッド』と呼ぶに相応しい様態となったかもしれない。
ただしそれは、淫虐のるつぼのうちに絶え間なく施される肉体への改造と偽りの休息を両立させた、堕落の揺り篭だった。
――眠りは日が傾き始める頃に終わりを迎える。
彼女が微睡ながら自分を包み込む肉の温かさ、ぬめり、体腔を埋める熱の塊と注ぎ込み続けられた媚液の重みを感じ取った途端、膣に突き刺さった剛直の動きは早く深いストロークに変わり、胸の覆いは先端を幾度も啄み齧り、口元の肉膜からは情熱的なベーゼが贈られる。
半日たっぷり媚毒に浸された肢体を、僅かな身動きも許さぬよう戒められたまま一方的に暴かれ、貪られ、快感を灼き付けられる行為は、覚醒から一時間――ベッド自体が『客』の場合は次の夜明けまで続く。
肉の蠢動が止まり、寝台の口が粘液を滴らせながら開くとき、饐えた性臭を放つ蒸気の中には、未発達ながらも熟れた身体と、身を焦がす劣情に眉を顰める一匹の牝がいるだろう。