Artist's commentary
Untitled
キラキラ、とは形容しがたい八月の青空。
海外とは違ううだるような暑さに身を焼かれる今日、日本の夏の厳しさを改めて思い知らされつつも、たきなと過ごす幾度目かの夏が訪れていた。
たとえ乙女の大敵に焼かれようが、濡れたアスファルトと共に蒸し焼きにされようが、そんなことは子供と大人の狭間で揺れる私たちにとっては些細(当社比)なものであり、その有りに有り余った青い力を存分にふるい、その試練とも言えるような街中の陽気さを味方につけつつ日本の夏を大変謳歌して過ごしていた。
本日、非番也。
私はあいも変わらずたきなを連れ、お互いの夏の”武装”を褒め称えあいながら街へと繰り出した。
私のお気に入りの水族館はたきなも大変気に入っており、大型水槽を前にはしゃぎながら、時にゆったりと漂うゼラチン質なイルミネーションに穏やかにその身を任せながら、知り尽くした室内を歩き回るのであった。
たきな個人の目玉イベントであるペンギン水中花火のショーは運悪くお休みとなっていた。
彼らも私たちと同じく非番であった。
たきなは「まぁ、そういう時もありますよね。仕方ありません」と努めて冷静に振舞おうとしていたが、その大きな宝石は揺れ動き細い肩はショックを隠しきれずに小さく垂れ下がっていたのを私が見逃すはずもない。
残念がるたきな「別に気にしてません!」を連れお土産コーナーをぶらり。
そんな相棒のためならとお花を摘みに行ってくると誤魔化し、目をつけていたお揃いのストラップを手に取り会計へひとっ走り。
「ごめんたきな、おまたせー」
戻ってくると、たきなはすっかり機嫌を取り戻していた。
たくさんのもふもふを前に随分とご満悦な様子で、なんともまあ単純な相棒に思わず苦笑いが浮かぶ。
そんな笑顔の相棒の前では、私の小賢しさなど消えかけの蚊取り線香、いや、消えかけの線香花火と等しきものであった。うん、風情風情。
お揃いの新しい”武装”を揺らし帰路へ。
「たきな、今日は残念だったねぇ」
「いえ、仕方ないです。ペンギンさんたちにもお休みは必要ですし――って、別に気にしてませんってば!」
「うひひ」
不満そうに唇を尖らせたたきなを目にして、からりと欠片が胸の奥へと落ちていった。
笑う。駆ける。また笑う。
「たきな!次は渾身の千束スペシャルをくらわせちゃるからな!」
「赤字にならないといいですけどね、お財布」
「うっせ」
幸せの欠片、また一つ。
「またね!」
「ええ」
花火、上がるといいなあ。