Artist's commentary
【PFLS】道を違えた二匹の狼
ファイアランドの狼とノーザリアの有角族、二つの血を持つぼくは、望まれない命だったのかもしれない。
産まれたファイアランドの村では化け物扱いされ、ある日両親も自分を置いてどこかへ行ってしまった。
村の狼たちは牙をむけてぼくを追い立て、命からがら辿り着いたのはノーザリアの領地だった。
血は止まらず、食べるものを見つけられず、倒れていたぼくを拾ってくれたのは…ノーザリアの人だった。
村の人たちはぼくを一匹の狼として家に迎えてくれ、貴重な食べ物を与え、育ててくれた。
いつも雪が降っていて、とても寒いところだけれど…とても暖かい場所だった。
だからぼくは、ファイアランドの狼を憎んでいた。それなのに…
(ルー、きみは…どうして…)
自分と同じ境遇の混血の狼を見つけた。
彼もまた村の人間から疎まれて故郷を捨てたようだった。
それでも彼は、かの地で…ファイアランドで生きると言った。
そして驚いたことに、彼の仲間の狼たちは「一匹の狼」として自分に接してくれた。
ファイアランドの狼に自分は疎まれていると思っていたのに。
とても優しい夜だった。暖かい夜だった。
何のために戦っているのか分からなくなる夜だった。
眠っている狼たちの横顔を見たあと、月を眺める。
ノーザリアの大地のような、青白く美しい月が森を照らしている。
(ルー、きみのことは好きだ。でもぼくは…)
やっぱりぼくは…もう戻れない。
弱いぼくを救ってくれたのはノーザリアの人達。
だからこの命は…ノーザリアのために。
戦争が終わったら、大陸が一つになると彼は言っていた。
もしそんな日が来たら…きっときみと。
「だからいまは…さよなら、ルー」
そんなあてのない未来を想いながら、白い狼は白銀の森へと消えていった。
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二匹の狼
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↓
雪夜の月
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からの流れです。
頂いた物語にどうしても彼なりの答えを出したくてファンアートさせて頂きました…!
この後それぞれの戦地に向かったということで…。
素敵な物語をありがとうございました‥!!
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お借りしました
月呑みのルー
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混血の狼リオン
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