荒涼たる山が抱く毒の湖。命を拒む地で彼女は独り暮らしていた。――ここから出ちゃいけないよ。――お前は山の怒りを鎮める鍵だからさ。それが皆のためなんだ。“皆”が誰かは知らなかったが、お婆さんとの約束だった。竜の手を取り掟に背いた日、初めて生のある世界を知る。“皆の世界”でもっと旅を続けたかった。