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Artist's commentary
Untitled
不殺を捨てた。
いざという時には迷い無く命を天秤にかけ、常に正しい選択が出来ると思っていた。その覚悟が私にはあると思い込んでいた。
違った。私にあったのは、甘さと傲慢と、憶測と、どうしようもない諦めの念だった。
覚悟だけが無かったのだ。
守れなかった。救えなかった。甘ったれな私を置き去りにして、あの子は冷たく軽くなっていった。
全てを呪った。何もかも壊して、自分自身も壊してしまいたかった。それでもあの頃の幸せと大好きな匂いと、唇の感触と、体温と、あの子の言葉が頭に貼り付いて離れなかった。
いくら生命活動を怠っても、私の鉄の心は常に一定の間隔で私を生かそうとする。あれだけ身近にあった死という概念が、私にはどこか遠く遠くに薄っすらと聳え立つ憧憬に見えて仕方がなかった。
それから、私は”私である”ことをやめた。実力を過信し、いつまでもぬるく半身浴を続ける私を背に、固く重い扉を閉め、いくつもの頑強な鍵をかけた。
これは手向けだ。奪えない銃と、あの頃の私と共にあの子の傍へ。
初めての”殺し”はつつがなく終わった。歩き続けよう。大好きだったあの子とクソッタレな私を守るために。そして殺し続けよう。いつか迎える憧憬に向かって。
銃を拾った。