Artist's commentary
Can't help falling love
「カタリナの次の休みっていつだ?」
王宮に用事があり、一通りの処理を済ませ廊下を歩いていると向こうからやってきた背丈がやや高い方の双子の王子であるアラン様が義姉の休みの日について聞いてきた。
「確か5日後で連休だと言っていたような気がしますけど…」
もう1人の王子とは長年張り合ったり牽制し合っているのでこの様な話の流れなら素直にカタリナのあれこれを話したりしないのだけれどアラン様はジオルド様と違い年々面裏無く落ち着きのある青年に成長していっているのでなんと無く此方も素直になってしまう。
「そうか、…メアリが最近寂しがってるから久しぶりに4人で子供頃よく遊んだ湖にでも行かないか?」
確かに最近カタリナは連日魔法省で働き詰めなので同僚である友人以外とは会えていない。アラン様も公務が増えてるしメアリ嬢も頻繁に王宮に用事があるわけでも無いので淋しいと思うのは仕方ないと思った。
「今日、義姉が魔法省から戻ったら伝えておきます。…えっと、一応確認なのですが、4人…で…ですよね?」
某王子が居るのならそれなりの心算(しんさん)をしておかないといけないので其処はしっかりと確認しておかないといけない。
「ああ、ジオルドなら抜けられない公務が入ってるから安心しろ」
「わかりました。其れでは、失礼致します」
馬車の中で長閑(のどか)な風景を眺めながら先ほどの事を振り返る。
「アラン様もライバルなんだけど…性格が良いだけに…良い意味でこっちの調子狂うんだよな…あの人が本気になったら1番厄介だ…其処は本当、リミッターとしてのメアリ嬢はGJと言わざるを得ないなぁ」
メアリ嬢の方は、僕の中では女性版ジオルド様という位置付けなのでこっちはこっちで厄介なのだけれど幼少期から学生時代までアラン様を(手足の様に)使いジオルド様と火花を散らしてくれたので助かってきた事も幾度と有る為、個人的に少なからず恩を感じていたから今回は大目に見ても良いかなと思った。
「と、言うわけでアラン様からお出かけのお誘いが有ったんだけど……義姉さん、行けそう?」
夕食後のいつものお喋りの時間に今日の出来事を包み隠さす伝える。
「勿論大丈夫よ!!ここ最近、部屋に閉じこもりっぱなしだったから出かけたい気分だったの。湖かぁ〜良いわね!美味しいお菓子とサンドイッチいっぱい持っていきましょうね!!!」
最近お疲れなのか帰宅後の表情がやや曇りがちだったので休日の予定で綻んでいく顔を見て此方もつられて笑顔になってしまう。アラン様、提案してくれてありがとう。
「じゃぁ、明日アラン様に伝えておくね」
ー当日ー
「カタリナ様〜!お久しぶりです!わたくし、この日を待ち侘びておりました!」
メアリ嬢のテンションが高い。人目を憚らずカタリナの手を取り腕を組み…肩に頬擦りの3点セット。…ま、まぁ3週間ぶりなら仕方ない。…大目に見よう。
この夏の日は、快晴で気温も上がっていたので標高の高い別荘地はその地の利を遺憾無く発揮してくれた。でもそうは言っても真夏なので日向に居過ぎると日差しにやられてしまう。僕とアラン様は、はしゃぐ2人の後ろに立ち、ほぼ同時にそっと日傘をさす。同じ行動をしてしまったので目があった時、思わずお互い笑ってしまった。
子供の様にはしゃぐ女の子2人をまるで親の様に見つめたり、時には慌てて追いかけたり敷物を敷いてあげて飲み物を準備し、みんなで笑いながらお昼を食べる。なんて素敵で幸せな1日だろう。
「ふえ〜夏だから仕方ないけどあっついわ〜」
「あっ、良い事を思い付きましたわ!」
「なぁにメアリ」
「ふふふ、見ていてくださいね」
そう言うと、メアリの手が微かに発光し程なくしてまるで生き物のに意志を持っているかの様な水が噴き出してきた。
「わぁ!凄いわ、メアリ!水飛沫が気持ち良い!」
「わたくしの水魔法が役に立てて嬉しいですわ」
魔法の力で制御された水流から少し噴き出す水滴がミストの様に心地良い。美しい水の軌道に目を奪われるカタリナ。よく見ると腕を組んでいるアラン様の隠れている指からメアリ嬢の水に力が注がれてより精度の良い魔法になっていた。
気がついた僕にアラン様が「この事は、此処での秘密な」と言う様な目配せをしてくるので「わかりました」と頷く。王族は魔法を使っていけないらしいがこれくらい(メアリ嬢のアシスト)の事なら…そう、人を傷つけるわけでもないので見逃したって良いのではと思ったのだ。
ただ…水流の形…カタリナは、子供の様にはしゃいで全然気がついてないみたいだけど……滅茶苦茶2人の心情が滲み出てない…?
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梅雨が明けカラカラでギラギラした晴れの日が続くと思って
水遊びしているラフを作ったのに塗っている最中と完成した頃は
戻り梅雨の最中というこのタイミングの悪さ。
キース以外の衣装は1期で湖に遊びに行ってた時のデザインをお借りしました。
メアリとアラン様は水属性なので暑い夏の間はこうやって
絵の中くらいは涼やか要員として描きたいですっ。
※アラン様は、公式の設定で王族なので頻繁に魔法使えないので
あくまでもメアリのアシスト役として。
Can't help falling love:和訳「好きにならずにいられない」
エルヴィス・プレスリー主演映画『ブルー・ハワイ』挿入曲
曲の和訳が知りたいという方は此方へ
http://www.worldfolksong.com/songbook/usa/cant-help-falling-in-love.html