Artist's commentary
【PFAOS】石榴的蛇【アフター】
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「いいかいツェさん。これから視(み)ることはもう起こってしまった過去のことだ。こちらは何も出来ないし何も変えられない。それを忘れたらいけないよ――」
そう隣に立つレナは警告する。
「――公主様。
彼等石榴の獣、その本性は獣か人、どちらであったのでしょう?」
「我々は人ではない。
お館様が術をかけた石榴の実を与えられた獣の番い、それから産まれ落ちたのが我々だ。
人の容(かたち)を与えられた獣――それが我々、石榴の獣だ。
皆お前のように人の力が強くはない。獣として生き獣として死ぬ、その生き方に何の疑問も不安もない者たちだ。
我々は人の世に紛れ、人を装うことは出来ても、人を真に理解することなどできぬ。人の中で我々は異端だ。
お館様を討ち、皆も役目から解き放ったとして、そうした者たちの未来をお前はどう考えているのだ?」
「兄貴は自分の意志で俺の思いを受け入れた。
死ぬことを怖れて。生きる目標を持って。
掟があるから頑張ってこれたんじゃない。
俺と、師父と、生きるために頑張ってきたんだ。
人の暮らしと生き方に触れられれば、"人"を知ることが出来る。
人と共に生きたいと願えば人になれる。
兄貴だってそうなったんだ。
だから、他の"獣"の石榴だってきっと、人がどういうものか解っていける。
一緒に歩む誰かがいるなら、きっと。
これからは俺がそれを――石榴のみんなに教えていく」
「確かにお館様からお預かりした命です。
死なぬよう、生き延びる全てを教えてきました。
お役目に殉じるためにではありません。
生きて欲しいと願うからです。
私が手塩にかけて守り育ててきた命です。これは――私の子です。殺せません」
「哀れな蛇よ、まずはそなたら二匹、獣に戻れ」
寝台の声が不気味に響いて座敷に拡がる。瞬間、空気の質が変わるような違和感の後――。
師父が呻き倒れた。
「俺は獣じゃない…。あんたの意のままにはならない」
手に持った鏢を自らの首元に掲げた強熙。口元を蛇のように大きく開け、
「――俺は、人間だ」
そのまま迷うことなく、首を切り裂いた。
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■俺は、お前と生きたかった。
■謝憂英のアフターエピローグ(全10回予定)になります。本文の全文はこちら→『石榴的蛇 小話』【novel/17875120】
時間軸は最終章終了後です。
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謝強熙 小話【novel/16531803】
■お借りしました。(敬称略)
占い師レナ【pixiv #78988899 »】
スィラン公主【pixiv #79877558 »】
謝憂英【pixiv #78953041 »】
■企画:pixivファンタジア Age of Starlight(終了)【pixiv #78509907 »】