Artist's commentary
100 薄明の丘で
騒ぎを聞きつけた 森の仲間が集まって来る。悲しみは唐突に。
「この娘は とうに命尽きておったのだ…」
嵐で漂着した直後の診察の際、ヤレユータンは アセビの “脈” が無い事に驚いた。
しかし、世界は広い。そういったポケモンなのかも、と思い黙っていた。
実際は 寄生したウツロイドにより動かされていて、
アセビの命は精神支配の圧と 遭難の疲労で失われていた。
故に 新たな寄生先を探す事が急務となり、連夜の凶行に加担させられていたのだろう と話す。
そしてセイガイ。誰の目にも もう最後の時が近い事は明白だった。
「ア、アセビ…どの…は、無事…だろうか?」
その問いに 皆は凍り付く。
「…無事だよ。セイガイさんが救ったんだよ!」
ボロは言った。周囲は目を丸くする。
こんなに立派なポケモンの最期が 後悔や絶望に包まれる事など あってはならない。
そんな思いが ボロに世界一やさしい嘘をつかせた。
「左様かぁ…左様…か…」
とても満足そうな表情をたたえ セイガイは命の旅を終えた。
『あせびちゃんも、おいたんも ねちゃった…。おひるには おきるかな?』
「うーん…どう…かな」
『ゆうがたには おきるかな?』
「ふたりとも…すご…く…頑張ったから…疲れ…ちゃったんだよ」
ボロの震える声で、末っ子も察し 声を裏返らせて言う。
『…しんじゃったの?』
ゴリランダーが子供たちを抱き寄せた。
「死んだら 終わりと思うかね?」
ハポンは顔をぐしゃぐしゃにして叫ぶ「もう動かないんだぜ?もう喋らないんだぜ⁉」
ボロは 一生懸命 考えるが 答えは出ず 黙る。
「いいかい、子供たち…」ゴリランダーがそう言いかけた時、末っ子がかぶさる。
『ぼく いっぱい いっぱい はなすもんね!かっくいいおいたんのこと…
やさしいあせびちゃんのこと…ともだちに はなすもんね!
これから ともだちになるこにも いっぱい いっぱい はなすもんね!』
そうまくしたてると わあわあ 泣いた。
「そうだ!語るのだ…伝えるのだ!友に!家族に!子々孫々に!
語り継がれれば…その者たちは 死なない!ずっと我らと生きるのだから!」
メッソンの催涙によるものではない。一番小さな子が出した答えに ゴリランダーは堪えきれず、
大粒の涙をこぼし 子供たちを強く抱きしめた。
薄明が差す丘に、ある変化が起きる。