Artist's commentary
Present
恋愛シュミレーションゲームといえば分岐やイベントがつきものだ。
「FORTUNE・LOVER」にもいくつかイベントが存在する。
破滅する事なく友人や家族と幸せな日々をおくり季節は冬。
12月も残りわずかという時にカタリナは、ふと気がついた。
「そういえば、現実世界もこの時期クリスマスの準備だわ。」
この世界でも現実世界のように神の誕生祭を行う。
この世界のそれは、カタリナの中の人物が暮らしていた日本のそれでは無く、ヨーロッパ式のいわば家族で過ごす1日となっている。
「乙女ゲームならこういう時期、誰かと1日デートするとかあったわねぇ」
なんとなく亡くなる前の世界での出来事を思い出しては懐かしさに浸るが、カタリナとしてこの世界に生を受け、数年暮して今やカタリナにとっては、ここの世界が「現実」、そして全てなのでどの様な事になろうとも今度こそ人生を立派に謳歌してこの世界に骨を埋めるという気持ちでいる。
この世界の神の誕生祭は、5日後。
毎年の様に家族で厳かに神の誕生を祝う。
「……むぅ。」
カタリナは、とてもモヤモヤしてきた。
お父様とお母様にキースとで使用人達が作ってくれた美味しいご飯を食べるのは、それはそれとして素晴らしい事なのにそれだけでは物足りないという気持ちが加速する。
そんなタイミングでキースが廊下の向かいから歩いてきた。
「あ、義姉さん。義母さんが探してたよ。」
「え、何だろう?私最近何も怒られる様な事してないわよっ…してないわよ…ねぇ?」
「どうだろうね?」
ちょっと焦っている義姉を見て可愛らしいなとキースはクスッと笑う。
「笑い事じゃないわよーぅ!」
「ごめんごめん。義父さんの事で相談したいんだって」
「お父様?」
「ほら、いつも義父さん家族の事思ってくれて色々買ってくれるじゃない。だから今年の神の誕生祭の夜に義姉さんと2人で何か義父さんにプレゼントしたいんだって。凄く可愛らしいよね」
「あら!あらあら!!あのお母様が!?お父様へのサプライズって事ね!分かったわ。そう言う事ならこのカタリナ頑張らさせて頂きます!」
「あっ、そんな勢いで走っていったら義母さんに怒られちゃうよ!…全くもう。人のためにって思うと直ぐああなんだから」
そこがカタリナの良いところなのだけどと風の様に過ぎ去る彼女を見送る。
「プレゼントか。カタリナの喜びそうなものと言ったら…うーん…高価なものは受け取ってもらえないだろうし…そうなるといつもの事になっちゃうけれどお菓子…なんだよなぁ。」
廊下を走って怒られはしたもののお父様へのプレゼントについて打ち合わせが無事終わり、あとは当日を待つのみとなり上機嫌で自室に向かうカタリナ。
自室のドアまで来て何か忘れている様な気がして手が止まる。
「お父様の事で頭がいっぱいだったけど…」
そうよ!もう一人大切な人がいるじゃない!
思わず声に出しかけて両手で口を抑え周りを見渡す。
どうやらその対象には気づかれていない。ほっと一息つく。
出来れば手作りの物にしたいがあまりにも日にちが足り無かったのでそれは誕生日の贈り物にまわす事に決めた。
対象者に気づかれぬ様、使用人に自分の構想が可能であるか尋ねるとなんとかなりそうだと返事が貰えたのでその方向で動いてもらえる様にした。
「自分の目で素材を見れないのだけが心残りだけど致し方なし。あとは当日を待つばかりだわ〜。絶対、絶対に似合うはずよ!」
そして当日の夜。
お父様は、毎年何かしらみんなにプレゼントしてくれるのでそこまではいつもと変わりないやりとりだったが、今年は続きがある。
少し頬を染めたお母様が、お父様に日頃の感謝してだと言い美しいブルーの宝石が装飾されたネクタイ用のブローチをプレゼントし、その姿を見たお父様は一目も憚らずお母様を抱きしめて思わずキスまでするものだからお母様は茹蛸の様に真っ赤になってしまった。
勿論、関わっている私もギュッと抱きしめられて息が出来ず大変な目に。
キースもこの時期限定のお菓子を私にくれた。
いつも気を遣ってくれてとても嬉しい。
そんなキースに今年は私からも贈り物よ…!
「キース。私もね、今年は準備してしてるのよ!」
「えっ」
その驚いた顔が見たかったのよ。うふふ。
「仕上がりと質感はまだ私も見れて無いんだけどしっかりと伝えてあるし…サイズは、大丈夫なはずよ!」
そう言ってキースに手渡してみた。キースはまだそれが何なのかわからない様子。
「えっと、開けても良いのかな?」
「勿論よ!」
そこには艶やかなシルクの生地で仕立てられた美しいタキシード。
「わぁ、素敵だわ!」
プレゼントしてあげたキースよりも先に声が出たカタリナ。
「ね、義姉さん。本当に…いいの?僕なんかの為にこんな…」
「何言ってるのよ、いいに決まってるじゃない!寧ろこれを着たキースが見たくて仕立ててもらったんだもん!」
実は、ロマンス小説にその様なシーン(実際は男女逆だが)があったので自分も真似してみた。
「見たい……じゃぁ着てみていいかな?」
幸に上質な生地のおかげで皺ひとつない。
「見たーい!」
数分後、カタリナたちの前に現れたキース。
「ど、どうかな」
普通にしてても頭一つ抜けて容姿が良いのにタキシードを着たキースは何処の国の王子様かと思うほどそれは美しい出立ちで溢れる色気に使用人達は魅入っている。
「これは、なかなかだわ…」
義姉という立場をわきまえているつもりでも感嘆の声が漏れるカタリナ。
「義姉さんが喜んでくれてるのならよかった。…今度の舞踏会でこれを着るから…一緒に踊ってくれるかな?」
「勿論よーーーー!」
ちょっと照れながらお誘いしてくれる姿が可愛らしかったので思わず抱きしめて答えたらみんなが見てるからって真っ赤な顔してわたしを両手でひっぺがしたキースは、まるでさっきのお父様とお母様のやりとりと似ていてなんだか今日という日がとてもとても幸せな1日に感じてしまった。
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2期のOPの衣装が塗りたくなり次期もクリスマスという事なので
そんな方向性のお話にしてみました。
あと、カタリナ視点は初でした。