Artist's commentary
暗黒なる十字架を背負いし聖人~Extraルーミア~
宵の闇。それは序章。「おはよう」「オハヨウ」二つの声が響く。「アナタハダアレ?」「私はお前」「アナタハワタシ?」「お前は私」黒の世界に二重の声。そこに2人の姿はなく2つの赤い眼が怪しく光っていた■「紫。暑いんだけど」「それを私に言ってもねえ」今年の夏にも博霊の巫女はウンザリしていた。そして振り向けば毛玉が。「誰が毛玉か、誰が」「あら藍」そこには隙間妖怪の式である九尾の狐。「北の結界修復まだ完了していませんよね?」「ばれたか」「もう最近いつもサボりすぎです」「藍が頼りになるから~」「紫様」「あら、怒った…訳じゃないみたいね」それは突如として幻想郷を覆った。影から生み出されるそれは血液を思わせる色。「懐かしい妖気ね藍?」「橙がいなくて良かったですよ、全く。」「私だけ状況を把握できていないのが気に入らないわね」3人が思い思いに言葉を並べた瞬間音もなくそれは現れた。漆黒の衣服に金髪、赤い瞳。それは博霊の巫女の知っている妖怪の姿。だが違う。それはなにより『恐怖』「妖怪が神社に何の用かしら?」「貴女も妖怪でしょうに」「私はお茶を飲みに来ただけ」「なら私も頂けるかしら?」「お断りよ」「あらここの主人はそこの巫女さんでしょう?」「私は彼女の保護者でもあるのよルーミア」ルーミア…?このスキマ妖怪は今そう言ったのか?「そう…残念ね。八雲紫」「どうやって封印を解いた」「あら九尾。貴女も変わったわねえ。」ルーミアと呼ばれた妖怪は楽しそうに言う。「永かったわ。とてつもなく。でももうお終い。八雲紫どうやら正しいのは私の方だったようね。この世は混沌と絶望で満ちあふれている。幻想郷の外はどうなってる?幸せに満ちあふれているかしら?希望に輝く人々が楽しそうに生活している姿は見える?」ルーミアは続けた。「あなたは幻想郷という狭い世界しか見てなかった。そこはただの桃源郷、幻の世界。でもそうするしかなかったのも頷ける。この世は神々の恩恵から離れて久しいわ。人間というものは不完全な生物。そして終末へと向かう」「御託はいいわルーミア」「他の賢者たちは?あの日磔にされて引き裂かれたのもいい思い出よ。それから必死で解いてきたんだ何十年も何百年も」そして天照大御神の加護を受けた太陽の輝きが断たれた。「博霊の巫女…ここから離れなさい。一刻も早く…!」空に赤と黒の十字架が怪しく聳え立っていた…。