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Artist's commentary
宇宙船の花屋
[1]
2278年、その系外移民船は決して脱出できない謎の宙域に閉じ込められた。そこには故郷とよく似た青い星が浮かんでいる。だがそれはどれだけ近づこうとしても遠ざかりつづける幻なのだ。
船に乗る者たちは茫々とした砂漠に投げ出された赤子も同然だった。その幼い目は遠い地平の丘に立つ母を愛おしそうに見つめている。——実際には存在しない蜃気楼の母だ。
この過酷な環境で息絶えてしまった方が楽だったのかもしれない。しかし赤子たちは生き延びるだけの力を持っていた。
かくして彼らはこの暗く孤独な場所で新たな社会を築き始める。
——あれから60年。二度と帰る事のできない地球。その豊かな自然を想い起こさせる人工花は人々の癒しとなっていた。