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Artist's commentary
59 変節を告げる風
今日は朝から やけに風が強い。メッソンの兄弟たちは 食事を終えて みんなで遊んでいた所だった。
時間が経つごとに増す風の勢いは だんだんと看過できない域に入っていく。
「なんだか怖いなぁ…静かになるまで どこかで やりすごそう!」
ボロたちが朽ちた倒木の中に隠れようとしていたその時、聞きなれた声が自分たちを呼んだ。
「ああっ! ここにいたのか!探したぜ~…」
バチンキーの ハポン君だ!息を切らせて 何やらとても急いでいる様子。
「今日は 風がすごいね。何かあったの?」
ボロがそう言い終わるのを待たず、ハポンは空を指さし伝える。
「すんげーすんげー嵐が来るらしいんだ!」
指が示す 北の空には 分厚く真っ黒な雲が現れていて、ゆっくりこちらに動いてきている。
「オイラたちが雨風をしのぐ洞窟があってな、そこにボロ君たちも連れてくるように
父ちゃんに言われたんだよ!」
この森の池に来てから嵐に見舞われた事は 何度かある。しかし、“すんげーすんげー嵐”と言われたら
グズグズしてはいられない。ボロたちはハポンに連れられ 避難先の洞窟へと急いだ。
子供たちは まだ季節を一周していないので 知らないのも無理はなかった。
この森が、この地域が、この時期に見せる厳しい一面を。