松の上からするすると伸びてきた赤い鼻に、促されるがまま指先で触れるやいなや、いかなる怪異か、身が麻痺したように痺れ、身動きがとれぬようになってしもうた。「見たか、これぞ我が妖術、天狗すらすとであるぞ。」豪胆な笑い声はすれども、松の枝葉に隠れて天狗の姿はいまだ見えぬ。