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Artist's commentary
降り立った丘で
[8]
「体が重い…!」
生まれて初めて踏む土に戸惑ったような足取りで歩きながら女性は小さく呟いた。
彼女が花屋として扱っていた人工花ではない、本物の命が宿る花が辺り一面に揺れている。踏んでしまわぬようにと下ばかり向いていたことふと気付き、顔を上げた。
水が煌めき流れる“川”、まっすぐな木が茂る“森”。お話の中でしか知らなかった風景が目に入る。なだらかな野の向こうには役目を終えたものが遠く霞んでいる。それは船の中にいた頃には想像すら出来なかったほどに広い場所だった。
その雄大な眺めよりも更に遠くにある何かを探しでもするかのように彼女は目を凝らす。
透き通った空を映した青い瞳は、より一層色を深めていた。【終】