Artist's commentary
【PFMOH】 逃げるわけにはいかない
涼やかな木漏れ日の差す樹海の中、隣を歩く少女が声を上げる。
「ヴィルク、あそこ」
アモネが指さした先を見ると、樹齢幾百はあろう巨木の太い枝の上。そこにはひっそりと宝箱が置かれていた。よく見つけたものだ。
「開けてきていい?今度はもうちょっと、いい物が入ってるかも」
僕は思わず笑って「どうぞ」と答える。宝箱を見つけるのは、この樹海に入ってから二度目だ。
◆
一度目は数刻前のお昼時。中身は「クスリ」と書かれた子ども向けと思しきお菓子が一つ。だがその包紙には白面黒髪七三分けの男の笑顔が描かれており、子供が見たら泣きかねない奇妙さを放っていた。
宝箱を開ける前、何が入っているんだろう?と珍しくソワソワしていたアモネだが、それを見るやいなや「コワイ!」「夢に出そう」「おかしなの…?クスリなの…?」と、複雑そうに渋い顔を浮かべていた。
その様子を、僕は密かに微笑ましく思った。宝箱の中身が期待外れ、または不可解な物でなんとも言えない気持ちになるのは、自分も昔通った道だったから。
世界中の秘境に宝箱を設置する『はこおじさん』なる冒険者の話を教えたのも、この時である。
◆
さて、アモネは荷物すら背負ったままでスルスルと木を登っていく。力があるなあ。僕は木登りが不得手なので地面から見守っていた、その時である。
遠くで何か音がした。自然の音ではない。バキバキ、と枝が折られる音。ザワザワ、と樹海の木々の間を走る音。
恐らく大型の、獣の足音だ。
ドタタドッ ドタタドッ
音が近づいてきてる、と気づいた時にはもう遅い。木の上に登りきったアモネを呼び戻す間もなく、巨大な獣が茂みから姿を現した。僕は咄嗟に距離を取る。
そこには複数の動物が合わさったような異形の生物―キメラが機嫌の悪そうな唸り声を上げていた。
「アモネ!そこから動かないで!」
注意喚起の声を上げた僕を、三種の顔面が睨め付ける。
青の樹海は場所によって、地形ごと変わると聞く。逃げて撒くにも、また此処へ戻れる保証はない。この広い樹海の中、あの子を一人残すわけにはいかない。ならば、
「逃げるわけにはいきませんねえ…」
キメラが一際大きな咆哮を上げる。
いつ飛びかかられても応えられるように身構え、じり、と足に力を込めた。
◆◆◆
下の様子をハラハラと見守りつつ、アモネは宝箱を開けようとしていた。はこおじさんの宝箱には時折『当たり』が入っているそうだから。
「ヴィルクを助けられるような…何か…いいもの!」
祈りと共に目をキュッとつむって、そっと宝箱を開ける。
ジャン!(ID判定:3) ▼ももいろのまくらを手に入れた!
枕を胸に抱きしめ、頭を乗せてみた。なんだか眠くなってきた…。
寝ている場合じゃない!
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◆前回【pixiv #88152424 »】から少し経ってのお話。
◆非公式イベント
はこおじさんの宝箱 pixiv #88114719 »
セイヘ・キマイラ討滅戦!! pixiv #88194210 »
◆お借りしました
クスリ pixiv #87831322 »
悪食のセイヘ・キマイラ pixiv #88071368 »
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◆ヴィルクとアモネ pixiv #87877966 »
ヴィルクはアイテムを取り出す暇もないので、避けて蹴ってのヒットアンドアウェイ戦法でなんやかんやするんだと思います(ふんわり)
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PFMOH第一章「ヘヴンへの道」【pixiv #88070704 »】
企画元:Mountain of Heaven pixivファンタジア外伝【pixiv #87556705 »】