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Artist's commentary
虫を統べる者
おいで。そう言っているように見えたその光は、森深くへと誘う■夏にはいった幻想郷は、その暑さに負けることなく活気に満ちあふれていた。■「暑い厚い篤い熱いアツイ~!」「チルノちゃんそんなに暑いなら木陰で休んでた方が…。」 新緑を思わせるような髪の毛を揺らしながら、大妖精は氷精を気遣う。「そうしたいのは山々だけどね。どうせあいつはまた勘違いで周りに迷惑かけるんだから知らせとかないとねえ。」「それなら私が一人で行ってくるから、待ってればいいのに」「あ~…そうねそうだったね。全然気付かなかったよ。」大粒の汗をかきながら氷精が続けた。「でもほら。あたいが通った後に涼しそうな顔してる人がいるから、これはこれでいいんだよ。さあ、さっさと片付けてかき氷でも食べようか」澄んだ空を二つの光が尾を引いていく■「…暑い…!」 この時期誰もが発する言葉だが、神社の巫女さんが発するようなイントネーションではないのは間違いない。いや、実際はどうか知らないが、暑いわねぇくらいが理想だと 私は思います。
「こんな暑いのに異変だなんて、なんてついてないのかしら」 不満げな顔で人間の里を歩きまわる。どうやら今回も異変の調査に乗り出たらしい。
「虫に刺されたくらいで異変だなんて、どれだけ幻想郷の人間は平和ボケしてるのよ…」 そう。今回の異変とは村人から『子供が虫に刺された』という苦情で始まったのだ。
虫に刺されることは、この時期ごく普通のことなのだが、訴えの数が異常だった。1日で30人。2日で60人。3日で90人。と、着実に数を増やしていくのだ。しかもすべてが人間の子供ときた。
「まあ…子供の方が虫に刺されやすいとはいうけど…さすがに普通じゃないわよねえ」 そして、村の診療所へたどりついた巫女の表情は一変した。ゆうに300人を超える子供たちが泣きながら自分の順番を待っていたのだ。
「…これはさすがに…見過ごせないわね…。」夏の空に紅と白の巫女は飛び立った。 ■「いないね…」博麗神社へたどりついた妖精二人(2匹というのが正しいか)が肩を落とす。「…遅かったか…」「どうするの?」「…一応リグルの方に伝えておくわ。勘違いした馬鹿巫女があんたを退治しにくるだろうってね。」「大丈夫かな?リグルちゃん。」「大丈夫じゃないのは巫女の方かもねえ…。」青空に緑が映える夏の午後。ここにまた一つ、物語が生まれる。