Artist's commentary
【PFLS】道半ば
ローレルランドからはその日のうちに出発した
今我々は銅貨の一つも持たない状況であり、宿はおろか食事をとることも出来ない
明るいうちに進めるだけすすみ、暗くなったら林の奥へ少し入り火を焚いて休息を取る事にした
小娘が魔法で火を起こせたのは幸いだった。ギルには問題なく付くだろう
小娘は道中しきりに月の女王に付いて話していた。やれ月のように美しいだの、やれ狼の気高さを感じるだの、今までの偏見から一転し目を輝かせて彼女を称えていた
煩くてかなわないが、気を張り詰めたまま疲弊し歩みが遅くなるよりはよほどマシだろう
火を囲み、兜を脱ぐ、すると小娘がまじまじと顔をのぞいてきた
「・・・騎士様」
「騎士じゃないと言ってるだろう。人の顔をじろじろ見てどうした」
「すみません。本当は生前の姿をしっかりと復元する術式だったのですが、私が未熟なばかりに」
「あぁ、これか。すっかり年老いたような姿になったが、まぁ死人としてふさわしい姿であるだろう」
肌や髪の色は褪せ、顔の一部は焦げ付いた骨が露出した異形の物となった
「こうして身体が動き、声も出すことが出来る。これ以上望む事は無い。奇跡に代償がつき物だと言うのなら、この程度安いものだ」
「そう、なら良いのですが…いいえ、もっと私がしっかりします」
小娘はそう言い魔術書を開いた
彼女はそれから黙々と魔術書を読み耽る。幼さしか感じなかった顔からほのかに意地を感じた
この娘はおそらく生きる事に強さが必要な事を知っているし、それに慣れているのだろう。だがそれは戦場の生き方だ
そう教育されたのだと考えると少し不憫に思える、だが今の環境を考えるとその志はこの先を生きる上で宝になるはずだ
静寂の中に薪の爆ぜる音が鳴り、夜は更けていく
俺はじっと焚き火を見つめ、たまに横から書物をめくる音が聞こえる
その音が次第に間隔を大きく空け始めていた
「もう寝ろ。日が上る前にはまた出発する。しっかりするなら今は休んでおけ」
「はい…もっと…立派な魔法士に…」
舟をこぎ今にもまぶたを閉じそうにしている
「立派な魔法士を目指すなら、まず休む事を覚えることだ」
「………はい」
明日は日が昇ると同時にギルの傭兵ギルドへ押しかけ、落とし前をつけ金を得る。後はその時に考えよう
焚き火をただ眺め、朝を待つ
横になった小娘は既に眠りに落ちているようだった
よく眠る事はいい事だ