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Artist's commentary
白の御髪がふえた頃
別れは突然訪れる。
先に告げていたことではあったが、やはりさち子には受け止めがたい現実であった。
『いや、嫌よ…っ!』
普段の彼女とはかけ離れた様子に一瞬の戸惑いを覚えるも、これが彼女の本心なのだと思い知る。
そうだった。彼女はまだ15歳。
どんなに大人びて見えても、繕いきれない子供の部分を持ち合わせた妙齢の子供なのだ。
さち子は泣き崩れ、こちらの腕をつかむ指にも力が入る。
どうにかしてやりたい。
でも、どうにもしてやれない。
『…約束を、指切りをしましょう。』
『…え?』
予想外の言葉だったのだろう、きょとんと年相応に幼い瞳がこちらに向けられる。
濡れながら、淡い期待を秘めながら。
(…でもね。ごめんね。)
『あなたの子供が12の歳になったとき、そのまた子供が12の歳になったとき。きっとまた、会えるから。』
自分に愛しいと告げる彼女に、なんと酷なことを告げたのだろうか。
それでも自分は人ではなくて。
人に等しい心はあれど、人として生きることは…さち子と共に生きていくことは出来ない。
だから、ほんの一握りの希望を抱いて言葉にのせて告げるのだ。
『白の御髪がふえた頃、次のあなたとまた会いましょう。』