Artist's commentary
【PFLS】眺めるは赤月の人狼
――――裏切りの雌狼は醜く、意地汚い、最も忌むべき人狼と教えられてきた
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龍の湖での船旅は難なく終わった。終わっていたのだ。セシリアが船に乗り数分した後、
魂でも抜けたかのようにコトリと眠りに落ちてしまった
初めて見る湖を見物出来なかったことに膨れたセシリアはフィデリオに抗議したが
「ん?なんだ、死んでなかったか」とあんまりな言葉を返される。もう怒る気にもなれなかった
船を降り、また歩く事になる。二人とも特に会話を交わす事も無くただただ森を歩いていく
そうすれば街の影は程なくして見えた
エルダーグランを裏切ったアンダーウッド家当主、月の女王レスリーが統治するローレルランド王国である
フィデリオが休憩がてら城下町で最近の情報を仕入れたいと言うので寄って行く事になった
すると何やら街の通りが騒がしい。フィデリオが街の人に尋ねると今から女王の出立であると言う
アンダーリアからの侵略を見事防ぎ、すかさず追撃を行う為の準備が今日終わり、今まさにホースヒルへ出陣する、と
それでこの人だかりなのか、とセシリアは納得した
「ここからうら…月の女王様を見られるんですか?」
「あぁそうだよ、もうすぐお出でになるそうだ。お嬢ちゃん、見たいのかい?」
街のおじさんにそう言われ、少し面食らってしまったが、見たいです。と言ってしまった
人混みの前のほうへ誘導され、大通りを見る。すでに兵隊の行進は始まっていた
どんな人狼なんだろう、教えられた事は本当なのだろうか、私がエルダーグランから来たと知られたら食い殺されてしまうのではないか
そういった妄想をしていると、周りから一際大きい歓声が上がった
巨大な狼に乗った女性が、アンダーウッドの旗と共にやってくる
あれが女王レスリー。一度も顔を見た事が無いにもかかわらず、彼女こそが月の女王だと心が囁いた
赤い外套、濡れた烏羽のような黒髪、血を吸ったような瞳
教えられた事とは何ひとつ違う。かなた月の麗人がそこに居た
「……綺麗な人」
セシリアは赤き月にただ見惚れることしか出来なかった
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※ホースヒル支援のためにレスリー様を描かせていただきました
時間的には二章が始まったばかり、と言う事にしておいてください・・・