
Artist's commentary
【 PFLS 】小さな刀と大きな槍【黎明の戦い】
ホースヒルの敗戦から数日、前線にほど近い街では、慌ただしく兵士達が動き回っていた。
その明け方の街を歩く影が2つ。
片や陣羽織にマントを負った大柄なはがね人、片や身の丈を遥かに超える槍を抱えた少年。
戦友の忘れ形見の視線は、腰に提げられた太刀に注がれていた。
「これはなぁ、ある意味己(うぬ)の得物と似た物同士よ」
「似た物同士?」
「如何にも、此れは汎人族の某の師(ちち)より氏と共に継いだもの」
「……ダルドさんの御父上、汎人族だったんですか?」
「うむ、丈も己と大差ないぞ」
少年の頭より少し上の高さを手で示すと、丸い目がさらに丸くなる。
「勿論某のように太刀として扱っていたわけではなくてな、野太刀として扱っていたものぞ。
柄の拵えも今より細く汎人族向きでな。
この筒も本来は他者の肩を借りるか壁を支えに撃つもの、そのままでは指が入らなんだ」
太刀に脇差、そして銃。その拵えは、今は普通の人間の手では掴み難い程太い。
「まあ刃や中身はそのままである故な。様変わりしようと形見は形見よ」
それでも、使いこなすのに相当の面倒があったのは確かである。
汎人族同士前提たる師の流派を身丈9尺程のはがね人がそのまま実戦に持ち込めるはずもなく、
試行錯誤の末、なんとかあらゆる体格の者に対応できる技を足していった。
銃に至っては頬付けもままならず右肩の装甲を差し替えすらした。
そうまでして使おうとしたのは半分意地と言っても良い。
だからこそ、その道の半ばにある少年が騎士には眩しくも懐かしく、そして危うく映った。
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■こちらを受けてpixiv #73582131 »
時系列は後かもしれないし前かもしれない。
■お借りしました。
アイトランサくんpixiv #72939057 »
ファイアランド兵pixiv #73057089 »
フォートブレイズ兵pixiv #72955239 » pixiv #72994850 »
フォートブレイズpixiv #73441726 »
■負けると家と墓が燃える仲間 pixiv #73128512 »
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去り際、一度小さな背中へ振り返る。
鉄火場に身を置く者として、何時我が身が果てても途方に暮れぬように育て、
果てまで長き遺跡生まれとして、やがて老いゆく我が子を見送る覚悟も出来ている。
だからこそ、見送ることなく見送られて逝った戦友を、羨む気持ちも無いわけではない。
(ロイダーン殿も槍を手離しておけば、あの子もこうは背負うまいに……何か負わねばまともに歩けぬ某がほざく資格はないか)
一度目は穏やかに。
師の死後どれほど文献を漁ろうと師が語った場所、諸氏族、そして武術流派。
似て非なるものは見つかろうとそのものは見つからなかった。
まるで、「別の世界の物事」のように。
それは、何も残さず自己が機能を止めれば、師の居た証が丸ごと失せることを指していた。
二度目は悲嘆と無力の中。
残す骨に「けがをしないおまじない」をかけると笑った幼子のそれは、胸の核のすぐそばに。
「……アイトランサ、ロイダーン・アゼファロスの子よ」
故に騎士は理解していた。残すものの大抵の願いは、残されたものの最初の使命は、
「死ぬでないぞ」
生存である事を。