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Artist's commentary
幻の地獄太夫
地獄太夫は、室町時代に実在したと言われている遊女である。
地獄絵図が描かれた羽織をまといながら念仏を唱え、自らを「地獄」と呼ぶ妖しい遊女であったが、絶世の美女であったという。
ある日、一休宗純がその地獄太夫をたずねると、あまりの美しさにこう歌を詠んだ。
「聞きしより見て恐ろしき地獄かな」
(意訳:噂には聞いていたがこれほどの美女(地獄)とは)
その歌に地獄太夫は咄嗟にこう詠んだ。
「しにくる人のおちざるはなし」
(意訳:死ぬ人は必ず地獄に落ちる=ここにやってきた者で私に惚れない者などいない)
その見事な返しに、一休も彼女に惚れ込んだという。
地獄太夫は若くして死んだが、もしかするとあの世でも地獄模様の羽織を纏いながら太夫道中をおこない、怪しげな微笑みで手招きしているかもしれない。その魅力に貴方は抗えるだろうか。
参考『一休関東咄』『本朝酔菩提全伝』