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Artist's commentary
菓厘堂4コマ番外編小説もどき【Ghostrick_live】16
「…おい、今の見たか」
「ええ、見ましたわ、この目でハッキリと」
「侍従長なんか、呆然とした感じで車に乗り込んでたぞ。あのまま飛行機なんて操縦したらヤバいんじゃないか?」
沈黙が訪れる。やがて、エルザが全身を使って喜びを示し、叫ぶ。
「ランが笑った!ランが笑っていたぞー!!」
そのエルザの喜びように、徐々に賛辞と喜びの声が波紋のように広がっていき、遅れてメイド達も歓声を上げた。
「よし!宴じゃ!ランは帰ってしまったが、ランが笑顔を取り戻した祝いに、宴を開くぞ!今宵も無礼講じゃああー!!皆の者、準備を始めい!」
「ぃよっしゃあああああ!!あんた達、聞いたよね!?今日も大パーティーよ!お姉サマは小お嬢様をお送りしに行っちゃったから、あたしが指揮執るよ!他ならぬ小お嬢様が笑ったおめでたい日とくりゃ、出し惜しみは無し!今ある食材全部使い切るつもりで、ご馳走作って作って作りまくりだぁー!!そーれ、かかれぇ!」
ピンクちゃんの号を受け、俄然やる気に満ち満ちたミフィを筆頭とするメイド達が、我先にと邸宅内に雪崩れ込んでいく。連日続いたパーティーがひと段落して、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった厨房も、あと数分もすれば再び戦場と化すだろう。
アイーナも日焼けを気にして屋内に戻り、一人残ったエルザは、照り付ける日差しの中で暫し空を眺める。
何をするでもなく、ただ、ぼんやりと。
メイド達の喧騒が表まで届くようになった頃、一点の曇りも無い青空に一筋の飛行機雲が伸びていくのが見えた。ランとレンを乗せて飛び立った自家用機が、その名残を刻んでいるように。
ランは強くなった。
自身の軽率さが招いた事とはいえ、辛い思いは勿論、悲しい事も、絶望すらもさせたに違いない。我が身の宿命を嘆き、苦痛さえ伴った筈だ。
けれど、もう、大丈夫。
涙に辛い過去を映すのではなく、笑顔で輝かしい明日を迎える事ができる。何より、ランには…奇妙で、不思議な、けれど確かで、暖かな優しさに包まれた絆がある。
ランの温もりが縁を繋いだ誰かを癒し、そしてランが大好きな友人達の温もりがランを癒してくれる。
もう、大丈夫。
嘆きも、憎しみも、全てを受け入れて血肉とし、ランは遂に笑顔を手に入れた。
その笑顔は、今まで以上に友人達を癒していくに違いない。
だから、大丈夫。
「だが、人間と人外の者達が手を取り合う日が来るまで、ひっそりと生きていかねばならぬ…不憫な事だが、あの子なら、あの子達なら、強く生きていけるだろうさ。あるいは、その役目は案外、あの子達の世代が果たすのかもしれんな」
独り言ちて、晴れやかに笑う。
「その時まで影に潜み、ひっそりと己の存在を主張する。まさしく”幽霊のような人生(Ghostrick live)”という訳じゃ」
朗らかな笑い声を呑み込んでいくのは、どこまでも澄んだ蒼天。
長い長い夏が、終わる。