Artist's commentary
アグレッサー:ソードダンサーとスカル1
『くそ、振り切れない。誰だこいつ、訓練生は全員墜としたはずなのに』 『久しぶりだなスカルフォ…いやここでは上草シオンだったか。ったく捻りのないコードネーム使いやがって』 『その声、まさかスカル1。なんでここに』 『可愛い部下がちゃんと仕事をしてるか見にきてやったんだよ。ようするに只の抜き打ち監査だ。ま、少しは真面目にやってるようだが』 『当たり前だ! 俺はプロだ、与えられた任務は…』 『そんなことよりこの間発売されたマスターファイルシリーズの新刊、お前のインタビュー記事読んだよ。成程大したものだ。お前も随分偉そうなことを言うようになったじゃないか』 『な、なんだよその棘のある言い方は。去年ここでMBSの記者から受けたアレだろ。別に大した話はしてないはずだ』 『はずだじゃない! ほんのこの間までカラの付いたヒヨッコだったお前が偉そうな能書き垂れるだけでも許せんが、特に我慢ならんのは117ページ上から13行目、“俺にだって守りたい誰かのために戦っているって側面はある”だと!?貴様に振られた俺の妹は、未だに空を見上げては溜息ばかりついているんだぞ。そんなアイツに慰めもかけられない俺の気持ちが理解できるか、ああ?』 『ちょっと待て話がずれてないかそれ? あと俺とシェリルのことを言ってるなら、アイツ未だに俺を奴隷扱いしやがって、俺だって、俺だってなあ…』 『やかましい! 俺は決めた、ここで貴様を始末して妹の後顧の憂いを断つ。そんな訳だ、長くも短くもない付き合いだったな。死ね、くだばれー!!』 『うわあああ』 大空で壮絶な空中戦を繰り広げる2機のVF-25を、訓練生たちはあっけに取られながら眺めていた。日ごろ自分たちをしごいていた“ソードダンサー”上草シオン教官が一方的に追いまくられるのを見て、上には上がいることを知ったのだった。もっとも空戦後地上に降りたスカル1は浮かない顔だった。結局上草機を一度もレティクルに捉えることができなかったのだ。(奴め、また腕を上げたな……) ■ガイノス恒星系植民惑星ガイノス3へのSMS教導部隊第2次派遣。2065年。 ■「ヴァリアブルファイター・マスターファイル VF-25メサイア 新たなる救世主」のエピソード、“ソードダンサー”より。