Artist's commentary
レディ・ガラドリエル
思いおこせば、指輪の3部作『王の帰還』。暗く禍々しい洞窟、よろめき倒れたフロドの前に広がったまばゆくも優しい光。汚れ一つない白い薄いドレスの裾。光を求めるように顔を上げたフロドに対し、激励でもなく、叱咤でもない、ただただ慈愛の微笑みを浮かべ、そのたおやかな手を差し伸べた奥方様の美麗なお姿は、わたしの中で一つの美の極致となったのでありました…… // 時が流れて『Hobbit』にて、今再びお目にかかることが出来るなんて思ってもいませんでした…あの素晴らしい映画に携わった全ての人々に感謝をささげたい! 過ぎる年月を感じさせないどころか年を経てますます美しく、月を自らの光輪のように背負い、夜風にドレスをなびかせて、うっすらと微笑みをたたえた口元で「灰色の放浪者よ」と呼びかけたそのお姿はまさしく美そのものでありました…! 金色に波打つ御髪、動きを極力抑えた静かな演技! 斜めの角度からの写し…特に伏せた目は完璧以外の何ものでもありません。威厳に満ちているのに微笑むときゅうっと幼く悪戯っぽくいっそ愛くるしいまでになり、爪はあえて伸ばさずネイルを施すこともなく素のままで、そこだけが妙に彼女もまた生命を持つ者であることを意識させるバランスも好きです…低めの声を轟かせる効果、ドレスの裾まで完璧に計算されつくされたスタッフの彼女への執念、何もかもを賛美したい…! 「レディ・ローリエン」「レディ・ガラドリエル」その呼びかけに込められた畏怖と崇拝の響きにひれ伏したくなります…そう、私は彼女の賛美者なのです。奥方さま! 奥方さま! なんと麗しい!