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Artist's commentary
秋雲先生と死の気配
2日目
自室の扉が開いた瞬間、秋雲はその闖入者が何者かを悟った。
夏のコミックマーケットに向けて執筆作業を行っていたのは1時間ほど前。
進捗は良好。締め切りは近いが、急な任務が入ってこなければ余裕を持って脱稿できる。そんな余裕もあって、彼女は息抜きがてらに落書きを楽しんでいた。
彼女の落書きはいつだって姉妹や友人、仲間や提督、鎮守府に勤務する人間を面白おかしく描いたものだった。出来上がった落書きを、同じような趣味をもつ艦娘相手に秘密裏に見せて笑い合うのは、辛く苦しい原稿作業後の楽しみのひとつでもある。
今宵の標的は姉であり呉鎮守府の第三秘書艦である不知火。
「怒らせたら怖い艦娘ランキング」で常に上位に入る不知火を茶化して描くというのは度胸試しに近く、だからこそ仲間内では特別人気のある対象であった。
闖入者が不知火だと悟ったのは、彼女から漂う死の気配からだった。
いつか対峙した戦艦タ級のそれと同等の気配は、振り向かず不知火だと理解出来た。そしてそれを理解できたからこそ、秋雲は身を硬直させ、恐怖した。
不知火の暗殺者のような小さな足音が、恐ろしく大きく聞こえる。心臓の鼓動はそれ以上だ。
振り向くことは出来ない。振り向いた瞬間、不知火の鋭い手刀が自身の首を刎ねるのではないか。そんな恐怖が秋雲を包んでいた。
一歩、また一歩と不知火が近付いてくる音が聞こえる。その度に秋雲の脳裏には走馬灯が過っていた。
数年前、まだ小さかった頃に艦娘の適正があると判明した日。親元を離れて訓練学校に入学した日。正式に艦娘となり、鎮守府に配属された日。様々な思い出が過ぎていく。過ぎていく度に、死が迫ってくる。
足音が止まった。不知火はすぐ後ろにいる。液晶タブレットの画面は、もう彼女にも見えていた。
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