Artist's commentary
昼食時間
この昼休みの時間をいつもの三人で採る事にした。したのだが、表を見れば桜もすっかり散り日差しが心地よく降り注ぐ今日は、いつもの食事場所というのも勿体ない。二人はそれぞれ準備をしていると、いつもの場所、食堂へ行こうと今こそ立ち上がろうとしていた。
「ねえ、皆で岬まで行って食べない?」
私はそう言うと思わぬ場所を示されたのか一斉に私を見る。あ、場所は変えなくても良かったのかもしれない。岬までは歩いては行けない距離でもないのだが、態々行くには、それもお昼を食べるためだけに行くには学び舎からは遠かった。
そんな私の気持ちを悟ってしまったのか睦月ちゃんは顔を横に振る。
「そうね吹雪ちゃん、折角の陽気ですしみんなで岬に行きましょう」
睦月はそう言うと少し顔を傾け笑みを見せ、夕立の横に立っては賛同を得まいと顔を見た。こうされてしまうと睦月ちゃんには敵わない。が、夕立は怪訝そうな顔を見せ。
「わかったわ、みんなで行きましょう。それに、わたし、別に面倒だとは思っていないっぽい」
すっかりふくれっ面だ。
そんな二人の反応に戸惑いを見せてしまった私だが、どうしても皆で食べたかった場所、岬へと心を弾ませ。
「よし、じゃあみんなで出発!」
私達はお昼のため、その移動の支度が全員済ませるのを確認すると学び舎を後にして移動を開始した。
陽気な日差しは私達の会話を陽気に弾ませて気が付けば大きな灯台が聳(そび)え立つ岬に到着してしまった。
こんなに近かったかな、などと思わせるぐらい私達の会話は時間を忘れさせた。
到着すると辺りを見渡しどこか座れそうな場所を探す。だが探すもなにも灯台まで続く道を逸れれば、この辺りの斜面はどの辺りも岩場ばかりで、探すほどでもなかった。
強いて言うなら座るのに痛くなさそうな場所を見つけるのに、三人ばらけてそれぞれで探したぐらいだった。
「ここ、良さそうっぽい!」
夕立ちゃんは早くも場所を見つけて大振りをして見せた。
何だかんだで夕立ちゃんも楽しそうで良かった。
三人で持ってきた弁当を広げると声がかかった。青葉さんだ。
「みなさんでお弁当ですか、いいですねぇ。一枚撮らせてください!」
「えぇ!?」などと一様に突然の事で驚いてしまったが、青葉さんはその反応に気付き取材ではなくてスナップ写真として撮ってあげますよ、と付け加えてた。
私達の快諾を確認すると青葉さんは黒い箱状に大きなレンズを取り付けたカメラを取り出し、私達と同様に岩場に腰かけると思いきや、少し身体をくねらしつつファインダーを覗かせていた。たぶん私達と後ろの灯台などを気にしているのだろうか。その様子は見ていて少し楽しい。
夕立は青葉さんを見て何か思ったのか、その何かを言おうとした時に青葉さんは今だと言わんばかりにシャッターを切った。