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Artist's commentary
遠いひと
いきなり私から手紙が届きさぞ驚かれたでしょうが、それだけ深刻な状態なのだということをお分かり頂きたいのです。
つい先日も南海岸で一番のデザイナーにオートクチュールというのでしょうか、豪華な衣装を注文致しまして、彼女にぴったりのドレスをしつらえたのですが、彼女は笑いもせずずっとそっぽを向いたままなのです。ここで一緒に暮らし始めた頃はそんな表情も魅力的で、むしろ私もそれを楽しんでいたのですが・・・。
やはり二年三年してきますとどうにも居心地が悪いというか、なにか私が悪いことでもしているんじゃないか、という気持ちになってくるのです。そういえば彼女は私を正面から見つめてくれたことなどあったのでしょうか。言葉さえまともに交わしたこともない、そんな気さえしてくるのです。どうか倦怠期のよくある悩みと片付けないで頂きたい。私はとても苦しいのです。私は彼女が幸せに笑っている姿を見たいだけなのです。私の幸せなど、どうでもいいのです。ですから貴方様にお手紙を出す事に決めました。
誠に恐縮ではございますが、下記の住所、私たちの暮らす家までお越し下さい。心よりお願い申し上げます。
そしてお越しの際には是非、貴方様のお名前がご記入された離婚届をお持ち下さい。
実は、お恥ずかしい話ですが、私が毎日お願いしているのに、彼女はどうしても婚姻届に名前を書いてくれないのです。彼女が悲しそうなのは、おそらくこの法的な問題が理由かと思われますので、宜しくお願い致します。
ちなみにこの問題に気づかせてくれたのは、他ならぬ彼女の行動からでした。彼女がいつもそっぽを向いて遠い目で見つめている方向が、あなたの住む町だからです。