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Artist's commentary
幸せだなあと思った
「幸運でしたね、ここの病院ではあなたの大怪我なんてちょちょいのちょいですよ」
と、芝居がかった口調で語る妖怪。もっとも、大の部分はここに来る迄に何者かの罠によって付加したわけだが。
「あらあら、何が幸福なものか、と。大変不服な顔をしていらっしゃいますね。勿論あなたを里に連れて行くという事も出来たのでしょうが、残念。いえいえ、幸福。おそらく、その大怪我も、ここにいる理由も」
と、そこまで妖怪が大演説をかましたところで、「もー!」と透き通った声が制した。がらりと扉をあけて出てきた女性は、それはそれは美しい看護婦で妖怪で、長い髪の毛を垂らした兎だった。大丈夫ですか、と彼女の柔らかな手が私の体に触れた時、ぞくりと背筋から頭の先へと熱いものが走る。
やさしく抱きとめられた。
ふわりとやわらかな感触につつまれて、むずがゆいここちよさと、恥ずかしさと、爆発してしまいそうな心臓の高鳴りをさとられまいと、何か別な事を考えようにも。
「立っているのもやっとじゃないですか」
そんな言葉が私の思考を全てかっさらっていく。心配そうに覗き込む彼女の顔は、もう、なんと形容していいのか。ただただ頭が真っ白になり、何も言葉が出なくなり
ただただ、ただただ、